ビッグデータ活用やIoT(Internet Of Things)といった産業振興とプライバシーなど消費者保護の両立を目指し、企業や学者が集まって2016年5月に一般財団法人の「情報法制研究所」を設立する。研究所は学術研究にとどまらず、企業が抱える具体的な課題について、秘密保持契約を結んで解決策を率直に議論できるタスクフォースを設置するのが特徴だ。

 情報法制研究所は法学のほか、ITや情報セキュリティ、情報学や経済学、社会学など学際的研究に加えて、学術的な見地から立法政策の提言も行う。医療データの取り扱いなど、縦割り行政のために個別の役所任せでは立法に着手できない横断的テーマに取り組む。

 研究所の設立には、LINEやニフティ、デロイトトーマツリスクサービスのほか、大手広告代理店などの企業が支援に参画する見通し。このうちLINEは2016年5月13日に研究所設立の支援を発表して、国ごとにプライバシーの定義が異なるなかで、国境を超えたユーザーデータの処理やサービス利用規約の整備などの多数の法的課題があるとして、「支援は社会的責任活動の一つ」と位置づけている。

 研究所の理事長に就任した鈴木正朝・新潟大学教授は、2016年5月14日に開催された設立シンポジウムで、「企業には、役所に声が届かず密室の中で漂っている多くの論点がある」と指摘(写真)。学術研究とは別に、理事会直轄のタスクフォースに約100人の研究員を委嘱して、企業の支援に乗り出す体制を作る方針を明らかにした。

写真●情報法制研究所設立記念シンポジウムの様子。企業関係者や弁護士のほか、法学や情報工学、経済学など学術関係者ら約300人が集まった。
写真●情報法制研究所設立記念シンポジウムの様子。企業関係者や弁護士のほか、法学や情報工学、経済学など学術関係者ら約300人が集まった。
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 研究所は中立的に運営する。企業団体や消費者団体など多様な利害関係者が関与する「マルチステークホルダープロセス」を採用し、会員を募って活動資金を集め、研究に参画できるようにする。