ファーストリテイリングが、「マイクロサービス」と呼ばれる新しい開発手法の導入を進めている。2015年9月に設立したアクセンチュアとの共同出資会社ウェアレクスのエンジニアを中心にマイクロサービスによる開発を実践しており、ECサイトのアプリケーションやスマートフォンアプリ「ユニクロ・アプリ」などに適用。既に稼働しているという(画面)。

画面●ユニクロ・アプリの画面。店舗在庫の確認や購入履歴の管理など様々な機能を持つ
画面●ユニクロ・アプリの画面。店舗在庫の確認や購入履歴の管理など様々な機能を持つ
(出所:ファーストリテイリング)
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 マイクロサービスとは、独立性が高く、粒度の比較的小さいサービス(インタフェースを持つソフトウエアコンポーネント)を組み合わせることで、アプリケーションを構築する手法だ(関連記事:マイクロサービスはエンジニアを元気にする?)。柔軟で迅速な開発・改変を可能にする。ファーストリテイリングでは、既に10種類を超えるサービスを、マイクロサービスで開発し運用しているという。

 マイクロサービスは、米ネットフリックスや米アマゾン・ドット・コムをはじめ、アプリケーションの柔軟で迅速な開発・改変が求められるネット企業を中心に採用が進んでいる。国内では、クックパッドやLINEなどの事例が知られているが、企業情報システムでの採用例は少ない。

 ファーストリテイリングがマイクロサービスの導入を決断したのは、「世の中の変化のスピードは速くなる一方で、良いアイデアを思いついたらすぐ実現しなくては遅れてしまう」(ファーストリテイリング 業務情報システム部 最高技術責任者の法華津誠氏、写真)との危機感からだ。

写真●ファーストリテイリング 業務情報システム部 最高技術責任者(CTO) 法華津誠氏。ウェアレクスの最高執行責任者(COO)も務める
写真●ファーストリテイリング 業務情報システム部 最高技術責任者(CTO) 法華津誠氏。ウェアレクスの最高執行責任者(COO)も務める
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 アプリケーション全体がモノリシック(一枚岩)になっている従来のアーキテクチャーでは、一部を変更するだけで全体に影響が及ぶ。それだけ工数が増えるうえに、リリースのスケジュールなどについて関係する開発チーム間での調整が発生する。アプリケーション開発時の仕様変更や開発後の改変での手間が大きく、ビジネスのスピードを阻害しかねなかった。

 これに対してマイクロサービスなら、比較的小さなサービス単位で、柔軟に変更を加えられる。「アップデートは今まで数カ月に1回程度だったが、今は1週間に複数回できるレベルになっている」と法華津氏は効果を実感する。