4月1日に就任したばかり。早速手腕が問われる、野村総合研究所(NRI)の此本臣吾代表取締役社長
4月1日に就任したばかり。早速手腕が問われる、野村総合研究所(NRI)の此本臣吾代表取締役社長
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 「現在の海外事業の延長線上では難しい。今までと違うアプローチで取り組む必要がある」――。

 野村総合研究所(NRI)が2016年4月27日に発表した、2016年4月~2019年3月の中期経営計画。同社が初めて対外発表した今回の中計は、4月1日に就任したばかりの此本臣吾代表取締役社長にとって、実質的な「所信表明演説」といえるものだ。27日の会見で自ら中計の説明に熱弁を振るった此本新社長。特に強調したのは、海外事業の抜本的な変革だ。

 同社は中計で、2019年3月期の連結ベースの売上高を直近(2016年3月期)の4214億円から5000億円へ、営業利益を582億円から700億円へと、それぞれ年平均6%前後のペースで着実に成長させる胸算用だ。

アジア中心から軌道修正、欧米強化へ

 国内事業のハードルはさほど高くない。3カ年を年平均4%の伸び率で進めば到達する水準で、「国内は過去も年平均4%くらいで成長しており、あまり無理のない成長だと思っている」(此本新社長)。

 半面、海外事業はアグレッシブだ。2019年3月期の売上高目標は580億円。直近の約2.4倍に相当し、3カ年でならしても年平均34%増と急ピッチに引き上げなければならない。これは、嶋本正前社長時代の2015年4月に策定した長期経営ビジョン「Vision 2022」で目標に掲げた「2023年3月期に海外売上高1000億円」から逆算したものだ。

 同社の海外事業は、これまで中国をはじめとするアジア市場を中心に据えていた。中華圏をはじめアジアの主要都市に現地法人・事務所を設置するなどして地道に顧客獲得を進めたほか、2015年4月にロイヤリティー・マーケティング・システムの強化を狙い米ブライアリー・アンド・パートナーズを買収したことも海外売上高の拡大に奏功。前長期経営ビジョン「Vision 2015」(2008年4月~2016年3月)の期間中、海外売上高比率が期初の1%から6%まで伸びた。

 しかしVision 2015の期初目標と比べると、6%という着地点は「にとどまった」と表現するのが正しいという。リーマンショック以降の世界経済の変調が中国市場をも冷え込ませたのに加え「日本で売っているものを中国でも売る」(此本新社長)という手法では、思うように顧客を獲得できなかったようだ。