コンビニエンスストアが、かつてない取り組みに挑戦しようとしている。全店舗で取り扱う全商品にICタグ(RFID)を付与し、深刻化する人手不足を解消しようというものだ。店舗でのレジ業務やサプライチェーンの効率化を目指す。

 セブン-イレブン・ジャパン、ファミリーマート、ローソン、ミニストップ、JR東日本リテールネット(ニューデイズ)のコンビニ大手5社と経済産業省は2017年4月18日、「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」を公表した。この5社で、コンビニエンスストアの売上の9割以上を占めていることから、業界をあげた宣言といえる。

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 宣言文では、2025年までに各社の店舗で扱う商品、年間およそ1000億点のすべてにICタグを貼り付け、個品管理を実現することをうたう。さらにICタグを使って集めた情報を、サプライチェーンの上流にあたる卸やメーカーにも提供する。

 2018年には、5社が特定の地域で商品にICタグを付け、個品管理実現に向けた実験を実施するという。

深刻化する人手不足の打開策

 商品すべてにICタグを貼り付けることで、店舗におけるレジ業務の負荷軽減が見込める。買い物かごにどんな商品が入っているかを、セルフレジに組み込まれたリーダーが一括で読み取る。ICタグに記録してあるJANコードやシリアルIDによって、どの商品かいくつあるかが分かる仕組みだ。

 1点ずつバーコードで読み取る手間がかからず、店員が作業する必要もなくなる。つまり「セルフレジ」が実現できる。コンビニ店舗に3つのレジがあるとすると、そのうち2つをセルフレジにできれば、それだけ店員は少なくてすむ。

 「コンビニ業界の人手不足は深刻で、時給も上昇している。今後さらに人手が減ることが予想されていることもあって、業界をあげてICタグの活用に取り組むことになった」と、経産省商務情報政策局流通政策課の加藤 彰二係長は話す。

 商品の棚卸し作業や物流の検品作業でも、ICタグで商品を確認できれば、作業効率が上がる。作業の自動化も見えてくる。食品の消費期限チェックや、万引き防止にも役立つ。

 こうした利点を期待し、経産省とコンビニ各社は、エイブリィ・デニソン・ジャパンや大日本印刷、デンソーウェーブ、東芝テックといったICタグ関連製品を手掛けるベンダーを交え、2016年5月から実用化に向けて議論してきたという。