改正個人情報保護法が2017年5月30日に施行されることに伴い、各種の分野(特定分野)におけるガイドラインの見直し作業が進められている。放送分野では、総務省が「放送受信者等の個人情報の保護に関する指針」(いわゆる「放送分野ガイドライン」)の改正に向けた作業を進めている。

 テレビがネットに接続される時代に入り、視聴履歴データ(視聴ログ)の収集が可能になり、ターゲティング広告や番組リコメンドなどへの活用が期待されるようになってきた。しかし、従来の放送分野ガイドラインは、有料放送の料金の支払いなどを目的にしたものとなっており、こうした新しい分野に向けた明確な規定がなかった。

 放送分野ガイドラインの改正案(既に公開されてパブコメ結果も発表済み)では、事前同意を得て視聴履歴データをこうした分野で活用する際のルールの明確化が図られる。テレビ放送の視聴履歴を活用したターゲティング広告などの本格的展開に向けて、制度が整備されることになる。

 視聴履歴を活用して趣味や思考などを類推し、セグメント化した層にターゲットを合わせて広告(情報配信)を展開するビジネスは、以前から有望視されてきた。しかし、果たして、実際にどれだけの効果を挙げることができるのだろうか。静岡県で実施された実証実験で、その効果が数字で示された。

HAROiDなどが提案して実証事業を展開

 静岡県で実施された実証実験とは、総務省の平成27年度「IoTサービス創出支援事業」の一つとして、2016年10月から2017年2月に実施された「テレビのIoT化とオーディエンスデータ連携による地域経済活性化実証プロジェクト」(代表提案者はHAROiD)である。ここで、視聴ログを収集、分析して視聴者像をセグメント化することで、情報配信、広告提供など新たなサービス創出の可能性を探った。

 このプロジェクトでは、静岡第一テレビの番組で、「テレビを視聴するとポイント(HAROiDが運用するCHARiNポイント)がたまる、様々なお得情報が入手でき、そのお店に来店したり購入することでさらにポイントがたまる」サービスとして、視聴者に参加を呼びかけた。TVログインと呼ぶこのサービスを実現するために視聴ログが必要なため、静岡第一テレビのデータ放送を使って事前に承諾を得たうえで、テレビからネット経由で1分に1回のペースで視聴ログを収集した。

図1●静岡第一テレビが「CHARiN」導入、ローカル局としては初の試み
図1●静岡第一テレビが「CHARiN」導入、ローカル局としては初の試み
(出典:HAROiD)
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