富士通と日本オラクルは2017年4月20日、富士通のクラウド「K5」からOracle Database(DB)が使えるPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)「K5 DB powered by Oracle Cloud」の販売を始めた。富士通はOracle DBを強みに、企業がオンプレミスで運用している基幹系システムをK5へ巻き取る狙いだ。

 K5のOracle DBは富士通のデータセンター(DC)から販売しているオラクルのクラウド「Oracle Cloud」のデータベースサービス「Database Cloud Service」を使う。Database Cloud Serviceはクラスタリング機能「Real Application Clusters(RAC)」やインメモリー化するオプション「In-Memory」など、Oracle DBの全機能が使えるのが特徴。日本オラクルの竹爪慎治執行役員 クラウド・テクノロジー事業統括 Cloud Platform 事業推進室長は「オンプレミスで使っているアプリがクラウド上でそのまま使える」と話す。

K5から提供する「K5 DB powered by Oracle Cloud」の概要
K5から提供する「K5 DB powered by Oracle Cloud」の概要
(出所:富士通)
[画像のクリックで拡大表示]

 K5から使うOracle DBサービスの月額利用料は1CPUコアとメモリー容量7.5GBを搭載した仮想マシンを使える最小構成が、それぞれStandard Editionライセンス込みで約5万7000円(税別)、Enterprise Editionライセンス込みで約22万3000円(税別)。利用料金は為替の影響を受ける。

オンプレからの移行に本腰

 富士通はオンプレミスで運用中のシステムをクラウドに移行したいと考える企業が多いと見ている。サービス提供を始める前から約150社と先行して商談が進んでおり、「数十の企業からシステムをK5へ移行する案件を受注した」(富士通の宮沢健太マーケティング戦略本部MetaArc戦略統括部統括部長)。

 オンプレミスでOracle DBを使って構築したシステムをクラウドへ移行する時には、SQL文の書き換えやOracle DBしか使えない機能を作り替える作業などが手間になっていた。移行にシステム変更が必要だと移行コストが高くなるだけでなく、変更によってバグが生じる可能性がある。富士通はOracle DBがK5で使えるようになったことで、システムを作り変えるコストとリスクを抑えて基幹システムのクラウド移行を提案できるようなった。

 富士通の新サービスを使うと、移行期間の短縮も期待できる。K5のOracle DBは富士通がシステム構築時に施すセキュリティなどの設定作業を自動化しているからだ。具体的にはデータベースとシステムの接続に使うポートの設定やDBのパラメーター設定など。これまで富士通の技術者が顧客企業に出向いて設定していた作業を、同社の技術者がボタン一つでどこからでも実施できる。運用中のシステムを停止せずにクラウド上に同期して移行するといった移行作業も、Oracle DBの全機能が使えるため容易になるという。