インターネット広告の世界で動画革命が起こっている。商機到来と見た各社が次々と関連サービスを立ち上げ、賑わいをみせる。サイバーエージェントが相次ぎ動画広告を手がける新会社を設立したほか、化粧品口コミサイト運営のアイスタイルも女性向けメディアやゲームサイトに動画広告を配信する新事業を立ち上げた。共通するのは、移動中などにスマートフォン(スマホ)で閲覧する消費者を想定し、ネットならではの斬新な内容の映像コンテンツ作りを試みている点だ。テレビCMとはひと味違った内容で消費者の心をわしづかみにできれば、ネット広告の価値が飛躍的に高まる可能性がある。
制作から配信まで丸ごと請け負う
サイバーエージェントが4月1日付けで全額出資で設立したのが、動画広告に特化したネット広告代理店CyberBull(サイバーブル)。動画広告の制作受託から配信までを一気通貫で担う。配信先は動画投稿サイト「YouTube」やSNS(交流サイト)上に設けられた動画広告枠などを想定する(写真1)。
ネット向け映像コンテンツの制作に長けたセミプロの動画作家とのマッチングも行う。「YouTuber(ユーチューバー)」と呼ぶ作り手を組織化するサービスを関連会社のCyberCasting&PR(CCPR)が3月に始めており、企業からの要望に応じて連携する体制を整えた。
サイバーエージェントは主力事業である「Ameba(アメーバ)」に記事や写真を投稿する芸能人やブログ執筆者、計1万7000組とのパイプがあるのも強み。また別の子会社を通じてゲームをプレーする様子を実況中継も始めており、そこで人気を博す「実況主」と呼ぶ200人も組織化する。彼らに対しても動画への出演を依頼できるという。IT(情報技術)を駆使して効率よくネット広告を配信する技術「アドテック」をフル活用し、消費者ごとに好みや現在地に応じた動画広告が表示されやすくもする。過去にネットを閲覧した履歴やスマホの位置情報を参考にし、いわゆるターゲティングを実施。再生してもらいやすい内容の動画広告を瞬時に導き出す。そのうえで、YouTube動画の冒頭やSNSの広告枠に配信する。