ブロックチェーンをはじめとする分散台帳技術の実用化に向け、三菱東京UFJ銀行などのユーザー企業と、日本IBMや日本オラクルといったITベンダーの動きが加速している。2017年3月以降、実証実験の開始やコンソーシアム参加が相次いだ。

 分散台帳技術は、取引履歴などのデータベース(台帳)を単一の中央組織が管理せず、複数プレイヤーが分散管理する仕組みを指す。金融取引の場合、台帳を集中管理する「信頼ある第三者」が不要になり、取引コストを減らしやすい。製造業のサプライチェーン管理などへの応用も期待される。

 ビットコインから派生したブロックチェーン技術と、分散データベースの分野で研究が進む「合意アルゴリズム」を組み合わせ、多様な分散台帳ソフトウエアが登場している()。

表●金融や決済業務を想定した分散台帳ソフトウエアの例
表●金融や決済業務を想定した分散台帳ソフトウエアの例
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国際送金が18年初めにも実用化

 三菱東京UFJ銀行は2017年3月31日、米リップルが開発したブロックチェーン派生技術の国際送金への応用を狙い、米英など大手金融機関6行が参加するコンソーシアム「GPSG(グローバル・ペイメント・ステアリング・グループ)」への参加を表明した()。

図●国内外の主要なブロックチェーン開発・検証コンソーシアム
図●国内外の主要なブロックチェーン開発・検証コンソーシアム
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 2018年初めの実用化を目指し、標準のビジネスルールを策定する。「従来の各国の法令や手続きと大きく乖離しないよう、また将来的に多くの金融機関がスムーズに導入できるようなルール作りを検討する予定」(三菱東京UFJ銀行)。

 暗号技術で複数の台帳を安全に接続する技術「Interledger」を使う。Interledgerはもともと、銀行が持つ台帳とブロックチェーンを接続する目的でリップルが提唱し、現在はWeb技術の標準化団体「W3C」で標準化が進むプロトコル。暗号技術を使い、信頼ある第三者の仲介なしに決済を完了できる。この技術で銀行の台帳同士を接続し、リアルタイムかつ低コストの送金を実現する。

 国内では、リップルの技術を国内送金に応用する動きもある。りそな銀行や地方銀行、ネット銀行など約50行とSBIホールディングスが参加する「内外為替一元化コンソーシアム」は2017年3月、Interledgerを使った検証用の決済基盤「RCクラウド」を構築した。

 実用化には、各行の勘定系システムの改修が必要になる。今後、同様の技術を採用するGPSGと連携しながら、共通の送金アプリを開発するほか、実用化に向けた法的課題なども検討する。