写真1●e-Residency用ICカードのレプリカ
写真1●e-Residency用ICカードのレプリカ
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 日本からインターネット経由で、わずか18分でEU域内に新会社を登記できる――。2015年4月から、エストニア政府は外国人向け電子行政サービス「e-Residency(電子居住)」の正式運用をスタートさせた。2014年2月に受け付けを始めて以来、世界中で約2万人が申請済み。2014年末からエストニア国内でカードの配布を始めていたが、2015年4月から各国の大使館でICカード配布を始めた(写真1)。

 このサービスは、本来はエストニア国民向けに発行しているICチップ入り国民IDカードを、居住権を持たない外国人にも発行するもの。これにより「(選挙権が必要な)電子投票以外でエストニア政府が提供するあらゆる電子政府サービスを、インターネット経由でどこからでも利用可能になる」(エストニア政府CIOのターヴィ・コトカ氏、写真2)。電子政府先進国エストニアによる新たな挑戦は、2016年1月にマイナンバー運用開始を控える日本にとっても大いに参考になりそうだ。

 e-ResidencyでICカードの発行を受けた人は、カードの公的個人認証機能を使うことで、同国内に銀行口座さえあれば、インターネット経由で海外からエストニア国内に会社を設立できる。会社の取締役会も、通常なら現地に赴いて書類にサインする必要があるが、ICカードの電子署名で代替できる。オンラインバンキングなど、公的個人認証を使った民間サービスも使える。

 「今のエストニアの人口は130万人ほどだが、e-Residencyを通じて(デジタル上の人口を)1000万人にできるかもしれない」とコトカ政府CIOは語る。「エストニアはアグレッシブな隣国を持つが、政府機能のすべてがデジタルになれば、例え領土がなくても国家を運営できる」(コトカ氏)。