携帯電話大手3社は2017年3月31日、2016年度に適用するパケット接続料を公表した。パケット接続料は、「格安スマホ」に代表されるMVNO(仮想移動体通信事業者)がデータ通信サービスを提供する際の仕入れ値に相当する。今回、前年度に比べた低減率は10.6~17.6%にとどまり、MVNOの期待をやや下回る結果となった。

 大手3社の2016年度適用のパケット接続料(レイヤー2接続、10Mビット/秒当たりの月額)は、NTTドコモが前年度比14.0%減の67万4818円、KDDI(au)が同10.6%減の85万8335円、ソフトバンクが同17.6%減の94万8803円である。

携帯電話大手3社のパケット接続料(レイヤー2接続、10Mビット/秒当たりの月額)の推移。カッコ内は前年度比。
携帯電話大手3社のパケット接続料(レイヤー2接続、10Mビット/秒当たりの月額)の推移。カッコ内は前年度比。
[画像のクリックで拡大表示]

 大手3社は設備費用をトラフィックで除算してパケット接続料を算出している。NTTドコモを例に挙げると、パケット接続料はスマートフォンの利用拡大によるトラフィックの増加で2011~2013年度に大きく下がったが、2014年度以降は同効果が薄れてきた。2016年度はNTTドコモ、KDDIともに過去最低の低減率を記録した。

ソフトバンクの低減率は上昇したが、格差の是正効果はわずか

 ソフトバンクの低減率が上昇したのは、接続料の算定式を見直した影響が大きい。総務省は2016年10~11月に「モバイル接続料の自己資本利益率の算定に関するワーキングチーム」を開き、接続料の算定で携帯電話事業者の裁量余地が大きい「利潤」の定義を見直した。

 具体的には、利潤の算定に用いる自己資本利益率に事業リスクや財務リスクを反映するための「β」(ベータ)と呼ぶ値に統一の基準を導入し、キャップ(上限値)を設けた。βの値は非公開となっているが、NTTドコモが最も低く、ソフトバンクが突出して高い状況だった。年度によっては「最大1.62倍の開き」(総務省)があったため、βの見直しで接続料格差の是正を図ろうとしたわけだ。

 この結果、ソフトバンクのパケット接続料は狙い通りに低減率が上昇したが、格差の縮小はわずかにとどまった。最安のNTTドコモを基準にすると、ソフトバンクは2013年度が約2.8倍、2014年度が約1.4倍、2015年度が約1.5倍、今回の2016年度が約1.4倍である。格差が縮まったことは間違いないものの、やや期待外れに終わった感が否めない。

 一方、NTTグループは2016年度に減価償却方法を定率法から定額法に切り替えた。接続料は前年度実績に基づいて算定するため、NTTドコモが2018年3月に公表する2017年度適用のパケット接続料は「低減率が再び上昇するのは確実」(業界関係者)とみられている。減価償却方法の見直しにより、接続料算定の分子である設備費用が圧縮されるためだ。MVNOの期待は高まるばかりだが、NTTドコモとソフトバンクの接続料格差は再び広がることが濃厚な気配となっている。総務省は3年後をめどに検証を予定し、今度はどのような施策を繰り出してくるかが注目となる。