4月に入り、新入社員を迎えた職場も少なくないだろう。今の新入社員世代は、幼い頃からIT機器に親しんでいることから“デジタルネイティブ”と呼ばれる。この言葉には、教えられずともIT機器やネットを自在に使いこなすイメージがある。もちろんそれは誤りではないが、「今どきの新入社員ならITスキルは十分なはず」と考えるのは早計だ。実は、メールを書く、Office文書を作成するなど、ビジネスの基本となるパソコン操作が満足にできない若者が少なくない。
2015年3月に大学を卒業して入社する新入社員の多くは、高校1年生だった2008年に国内で初めてiPhoneが発売された、いわば“スマホネイティブ”。この世代をはじめとする若年層は、パソコンよりもスマートフォンを使う時間が長い(図1)。スマートフォンは使いこなせても、パソコン操作が十分にできるとは限らないのだ。
端的な例がキーボード操作である。システムインテグレーション事業などを手掛けるあるIT系企業の人事担当者は、「2014年に新入社員向け研修を務めた講師から、“新入社員のタイピングが遅い”というフィードバックがあった」と話す。プログラミングなどの技術系研修でもそうした傾向があり、サンプルコードを入力するのにも時間がかかった。そこで2015年度からは、新入社員向けの教育項目にタイピングを盛り込んだ。
首都圏の複数の私立大学で情報処理の非常勤講師を務める清水哲郎氏も、「10年ほど前までは、文字入力などのキーボード操作が満足にできない学生が散見されていた。数年前はそうした学生をほとんど目にしなくなっていたが、ここ1~2年でまた見かけるようになっている」と話す。フリック入力などスマートフォンならではの文字入力に慣れている影響か、ローマ字入力の方法を知らない学生もいるという。