総務省の強力な後押しを受け、MVNO市場が順調に拡大している。2015年の「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」、2016年の「モバイルサービスの提供条件・端末に関するフォローアップ会合」を経てMVNOの支援策は出尽くしたと言われるが、細かな課題はまだまだ残っている。

総務省のMVNOを対象としたアンケート用紙
総務省のMVNOを対象としたアンケート用紙
10ページにわたって質問が並び、すべて文書で回答する形式になっている。
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 例えばSIMカードの初期費用。NTTドコモは2016年8月、「USIMカードの貸与に係る費用」を新たに設け、1枚当たり394円の徴収を始めた。それまでは1枚当たり月101円の基本使用料だけで済んでいたが、純粋な費用の増加となり、薄利多売のサービスを展開するMVNOは大きな痛手を受けた。

 その後は右へ倣えだ。KDDI(au)は2016年10月から「au ICカードの貸与に係る費用」(1枚当たり356円)、ソフトバンクも2017年2月から「3Gチップの利用に係る費用」(同384円)を徴収し始めた。初期費用の徴収は理解できなくもないが、問題は費用の高さだ。「SIMカードは1枚当たり百数十円」(業界関係者)とされ、単価は調達規模に応じて変わる。「携帯電話大手3社の仕入れ値はもっと安いはずで、利益を乗せすぎではないか」(同)といった指摘が出ている。

 NTTドコモが一部のMVNOとの間で始めた顧客管理システム(ALADIN)の連携についても不満の声が上がる。同連携の実現により、MVNOは自社端末とALADIN端末への2重入力の手間を省くことができ、サービス利用開始までの時間短縮やMNP(モバイル番号ポータビリティー)予約番号の即時発行などを見込める。運用が大幅に改善するのは間違いないが、MVNOの費用負担は月200万円以上。メリットを得られるMVNOは大手に限られる。

 携帯電話大手3社は接続義務を課され、接続料だけでなく、回線管理費や工事費、手続費、網改造料については「原価+適正利潤」で提供することが求められている。ただ、SIMカードの初期費用や顧客管理システムの連携費用は対象外。大半のMVNOは「卸」契約のため、厳密に言えば不満を主張できる立場ではないわけだが、「接続」の解釈を広げることにより、いかに低廉化を図れるかが今後の注目となりそうだ。