シンコム・システムズ・ジャパンは2017年3月から、見積もり計算の支援ツール「Cincom CPQ(Configure-Price-Quote)」の拡販を本格化している。Cincom CPQは米シンコム・システムズが約30年前から提供している製品だ。米シンコムは、製品を世界で一斉に販売したいと考える日本企業の需要がかつてなく高まっていると判断。同社の多言語対応に沿って、30年越しで日本市場への製品投入を決めた。

米シンコム・システムズのグレッグ・ミルズ社長(左)と シンコム・システムズ・ジャパンの石村弘子代表取締役マネージング・ディレクター
米シンコム・システムズのグレッグ・ミルズ社長(左)と シンコム・システムズ・ジャパンの石村弘子代表取締役マネージング・ディレクター
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 Cincom CPQはルールベースの人工知能(AI)を組み込んでいて、製品のオプションを入力すると価格を計算し、見積もりができるツールだ。CRM(顧客関係管理)、ERP(統合基幹業務システム)、PLM(プロダクト・ライフサイクル・マネジメント)システムなどのデータベースと連携させて見積もりができる。

 タブレットに製品の設計図を表示したりオプションの選択に対応した価格計算したりするなど、モバイル利用も想定している。「営業担当者が顧客と話しながら具体的な提案がしやすくなる」(米シンコム・システムズのグレッグ・ミルズ社長)。

ERP(統合基幹業務システム)、CRM(顧客関係管理)、CAD(コンピュータによる設計)のデータベースとCincom CPQを連携しているシステム構成図
ERP(統合基幹業務システム)、CRM(顧客関係管理)、CAD(コンピュータによる設計)のデータベースとCincom CPQを連携しているシステム構成図
(出所: シンコム・システムズ・ジャパン)
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 ミルズ社長はCincom CPQを、「営業活動で顧客満足度を高めるために必要なツール」と説明する。顧客に提案する製品のオプションを豊富にそろえ、「条件や価格計算が複雑な場合でもその場で正確な判断ができる」(同)ようにした。

 同社はCincom CPQを1980年代から販売しており、約30年の歴史がある。2015年中旬から機能強化した最新版はモバイルとクラウドに対応したアーキテクチャーを採用。複数の拠点からアクセスしても安定して使えるように、オートスケールの機能を組み込んでいる。

 製品マニュアルの作成やシステムの日本語対応などが済み、日本向けに販売ができるようになったのが2017年1月。Cincom CPQを日本向けに販売するのは初めてで、日本法人としては新製品という位置付けだ。パートナー企業へ製品の説明をしたり、顧客企業に拡販する体制を作ったりといった準備をしてきた。2017年3月21日からパートナー企業向けの製品トレーニングを開始し、本格的に拡販を始めた。

 なぜ今になって日本向けに提供を始めたのか。ミルズ社長は「素早い意思決定のために、その場で見積もりができるシステムの重要度が増しているため」と説明する。「見積もりをするシステムが各国の言語や通貨に対応していれば、企業は新製品を一斉にグローバルに提供できる」(同)。

 そのためCincom CPQは、グローバルに対応する戦略を取っている。英語の次にサポートする言語として選んだのが日本語だ。順次ほかの地域言語のサポートを進めている。

 2番目のサポート言語に日本語を選んだのは、「Cincom CPQが日本の特徴によく合っていると判断した」(ミルズ社長)からだ。同社は日本の特徴を、「製造業が大きな市場を持っていること」とみる。GDP(国内総生産)に対する製造業の割合は、米国が12.5%に対して日本は20%に達する。「日本の製造業は複雑な製品を短いライフサイクルで作り続けてきた。多品種の製品に対して細かく条件を設定して見積もりを出すのは、Cincom CPQが得意とすることだ」(ミルズ社長)。