NTTデータは2016年3月28日、自社で最大規模となる買収を発表した。30億5500万ドル(約3500億円、1ドル113円換算)を投じて米デルのITサービス部門を買収する(関連記事)。内部では2020年に海外売上高1兆円という目標を持つNTTデータは、米デルによる米EMC買収の副産物ともいえるこの好機を最大限生かしきれるか。

「アメリカでは全然知られていない」

 買収するのは米デルが北米を中心に展開するITサービス事業と、ITサービス子会社3社。買収対象事業における従業員数は2万8000人、2016年1月期の売上高は28億2600万ドル(約3700億円)、活動地域は30カ国である。子会社3社は米デルシステムズ、アイルランドのデルテクノロジー&ソリューションズ、シンガポールのデルサービシーズとなる。

NTTデータの西畑一宏 取締役常務執行役員 グローバル分野
NTTデータの西畑一宏 取締役常務執行役員 グローバル分野
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 NTTデータは28日の取締役会で買収を承認、米デルとの買収契約を締結した。同日夜に開いた記者会見にはグローバルでのM&A(合併・買収)を担当する西畑一宏取締役常務執行役員グローバル分野が出席。「買収によって米市場でのプレゼンスを上げられる」と意気込みを見せた。

 米市場では既にNTTデータは子会社を持っている。2010年に約1100億円で買収した米ITサービス企業のキーンが母体だ。2009年12月期の売上高が約654億100万円だったキーンは買収以降、「目標を越えて成長し続けた」(NTTデータ幹部)。その後、小規模な買収も加わり、北米(アメリカとカナダ)での売上高は2015年3月期で1752億円に達し、海外売上高4500億円の約4割を占めている。

 成長はしているものの、西畑氏は「米国ではNTTデータブランドはほとんど知られていない、順位でいえば30位ぐらいだろう」と冷静だ。西畑氏によれば米国の市場規模は5000億ドル(約56兆5000億円)規模。「目指せIBM」とひそかに意気込むNTTデータの経営層からすれば、北米市場は開拓の余地にあふれている。

 だが、買収交渉の歩みは遅かった。業績重視でロングリスト(買収先候補の一覧)を作り、NTTデータのカルチャーに合うかをリストの上から1社1社と交渉し、断られ続けてきたNTTデータの海外買収担当者たち。2015年にはITコンサルティング企業の米カーライル・アンド・ガラガー・コンサルティンググループを約270億円で買収したものの、「売上高10億ドル(1130億円)規模のIT企業が売りに出ることは、ない」。西畑氏は実体験からこう感じていたという。