損害保険ジャパン日本興亜が、基幹システムの再構築プロジェクトを本格化させる。まもなく要件定義を完了し、2017年5月に基本設計を始める計画である。

 同社が基幹システム再構築の準備を始めたのは2013年4月。プロジェクトの序盤フェーズである要件定義の工程を終えるまでに4年かかった計算になる。一般的なシステム開発であれば失敗と見られかねない長さだが、損害保険ジャパン日本興亜の場合はやむを得ない面がある。

 途中の2014年9月には企業合併に伴うシステム統合を優先せざるを得なかった。さらに、COBOLアプリケーションの大半をJavaアプリケーションに切り替える、システム刷新とともに利用部門の業務も改革するといった挑戦的な要素を含んでおり、これらの要素に対して多数の関係者の理解を得る必要があった。

 実際、プロジェクトの主要メンバーはシステムを利用するさまざまな関係者の協力姿勢を引き出すことに多くの時間を割き、要件定義の完了までこぎつけた。同社の事例は、日本の大企業が多くの関係者を巻き込み、システム刷新に取り組む難しさを象徴したものと言える。

基幹システムを全面刷新し、業務プロセスも変革

 損害保険ジャパン日本興亜が基幹システムを刷新する大きな狙いの一つは、「商品開発のスピード向上」(取締役常務執行役員の浦川伸一氏、写真1)。同社では近年、商品を企画してから発売するまでに何カ月もかかるような事態が発生していた。

写真1●取締役常務執行役員の浦川伸一氏(左)とIT企画部 課長の田口晃敏氏(右)
写真1●取締役常務執行役員の浦川伸一氏(左)とIT企画部 課長の田口晃敏氏(右)
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 主な原因は、基幹システムの老朽化である。現行の基幹システムは1980年代に稼働させたもので、度重なる改修によって保守性が悪化。このため、商品に必要な機能を開発する前の影響調査などにどうしても時間がかかってしまう。加えて、利用部門が企画する商品の設計が複雑なために、開発に工数がかかってしまうケースもあった。

 損害保険ジャパン日本興亜はこうした原因を解消するため、システムの刷新を決断。併せて非効率になっていた利用部門の業務プロセスや、業務要件を定義する手法の改革にも取り組むことにした。

 もっとも、利用部門は自部門の業務を変えなくてはいけないとなると、抵抗感を抱きやすいもの。利用部門の抵抗感を取り除き、一連の取り組みに理解を得る必要があるわけだ。しかも損害保険ジャパン日本興亜は、2014年9月の旧損害保険ジャパンと旧日本興亜損害保険の経営統合をはじめ、企業合併を何度か経験してきたため、理解を得る必要がある関係者が多数に上る。