情報サービス産業協会(JISA)は2017年3月22日、「情報サービス産業におけるIFRS第15号会計処理事例集(以下、事例集)」を公開した。IFRS(国際会計基準)が定める売上高の計上基準「IFRS15号」にのっとって、受託ソフトウエア開発やクラウドサービスの会計処理を実施するための参考資料となる文書だ。IFRS15号は2018年1月からIFRS採用企業への適用が始まる。

 今回の事例集についてJISAは「あくまでIFRS15号に基づいた会計処理を想定している」と位置づけているが、IFRSを採用していない日本企業でも今後、事例集が示す会計処理が必要になる可能性がある。

 現在、日本ではIFRS15号を基にした収益認識(売り上げ計上)基準の策定が進んでいる。日本の会計基準の策定主体である企業会計基準委員会(ASBJ)は「2017年6月までに収益認識基準の草案を公開する」としており、日本でもIFRS15号に近い売り上げ計上基準の適用の可能性が高い。その場合、上場企業を中心にしたほとんどの日本企業が、今回のJISAの事例集に近い会計処理を実施することになる。

システム開発の現場の業務プロセスが変わる

 JISAが公開した事例集では「契約と履行義務に関する論点」「データセンター(DC)を設けてクラウドサービス等を提供する取引に関する論点」「受託開発ソフトウエア取引に関する論点」「その他の取引事例」「その他の論点」の五つの分野で合計35種類の会計処理の事例を提示している。

 35の事例はそれぞれ、「前提条件」や「会計処理」「解説」に加えて「業務プロセスやシステムに対して想定される影響」で構成する。実際の日本の受託開発の現場の状況を踏まえた事例を取り上げていることが特徴だ。

 契約と履行義務に関する論点で取り上げる事例では、「ソフトウエア開発完了後に契約書が締結される場合」に「内示書が契約とみなせるかどうか」をIFRS15号の要件に照らし合わせて、説明している。この場合、業務プロセスへの影響として、「契約書が締結されずに内示書により発注を受けている場合、内示書で規定されている内容を十分に吟味し、収益計上が可能かどうかを慎重に検討することが求められる」としている。

 クラウドサービスの会計処理の事例では、「クラウドサービスを提供する際に初期設定作業を行う場合の会計処理」など7種類の事例を説明。サービス提供期間が10年間の場合、初期設定作業にかかった費用は「資産(契約コスト)として計上し、クラウドサービス提供期間にわたって償却していくことになる」といった趣旨の説明をしている。