自然言語処理サービス開発のレトリバは2017年3月8日、東京大学エッジキャピタル(UTEC)の運用ファンドを引受先とする第三者割当増資で、2.5億円を調達した。自然言語処理を中心とした技術者の増員に充てるという。
レトリバは、2006年設立のPreferred Infrastructure(プリファードインフラストラクチャー、PFI)から、検索・機械学習・データ分析のプラットフォーム「Sedue」などの事業を継承したスタートアップ企業である。
Sedue事業に携わっていたPFIの社員11人が2016年8月に新会社を立ち上げ、PFIから事業を買い取った。設立スキームとしてはEBO(従業員買収、employee buyout)に近い。
PFIはSedueを含む全事業をレトリバに譲渡した結果、今は社長の西川徹氏、副社長の岡野原大輔氏が所属するのみで、事業は行っていない。かつてのPFIは、同じくPFIから派生しディープラーニングを専門とするPreferred Networks(PFN、西川徹社長)と、レトリバにほぼ分割されたことになる。
レトリバ社長に就任した河原一哉氏は、かつてサン・マイクロシステムズ日本法人のSolarisエバンジェリストだった経歴の持ち主。シーエー・モバイルを経て、2010年にPFIに入社した。
レトリバの河原一哉代表取締役社長に、起業のきっかけと、事業の将来像を聞いた。
レトリバを立ち上げたきっかけを教えて下さい。
2016年まで西川さんがPFNとPFIの両事業ドメインをみていましたが、異なる事業ドメインを持つ二つの企業を経営するのは大変、という話になったのがきっかけですね。
私は当時からSedue事業のメンバーでしたが、西川さんはメンバーに、PFIの事業をPFNに吸収させるか、あるいは独立するか、と話を持ちかけました。西川さんには「アントレプレナーを育てたい」との考えがあり、それで独立という選択も示してくれたんですね。
私を含むSedue事業部のメンバーは「独立したい」と伝えました。そこで、PFIから事業譲渡を受ける形で、レトリバを立ち上げました。
現在はどのような事業を手掛けていますか。
Sedueを含めた従来製品の提供やサポートも継続していますが、現在の主力は、コールセンター向けの二つのソリューションになります。
一つは、コールセンターの問い合わせ履歴を分析し、重要なデータを抽出する「VoC Analyzer」。もう一つは、過去の問い合わせ履歴から類似した質問とその回答を検索する「Answer Finder」です。
競合となるソリューションは何でしょうか。
コンペでよく当たるのは、やはり日本IBMの「Watson」ですね。例えばVoC Analyzerは「Watson Explorer(旧ICA:IBM Content Analytics)」と、Answer Finderは「Bluemix Watson」と競合します。
Watsonと比較して、どの点で優位があると考えていますか。
これまでのSedue事業で培ったノウハウを含め、日本語の扱いについては、我々にアドバンテージがあると考えています。