全有権者情報約68万人分を含む個人情報が流出した堺市。2016年3月2日に堺市は、流出の原因を作った元職員を刑事告訴した(関連記事)。それに先立つ2016年2月25日には、外部有識者による「検証委員会」の報告書が公開されている。

 堺市は、外部からの指摘を受けて流出の事実を2015年9月に公表した(関連記事:堺市職員が選挙関連データ約68万件を不正持ち出し、自宅PCに保存)。その後も調査を続けた(関連記事)。大量の個人情報を自宅PCや民間レンタルサーバーなどに保管し、インターネットに流出させたとして、2015年12月14日付で元職員に懲戒免職処分を下していた(関連記事)。

 検証委員会は大きく二つの問題点を指摘している。

匿名通報者に約3カ月連絡せず

表●堺市の個人情報流出事件の経緯。「調査報告書」などを元に作成した
表●堺市の個人情報流出事件の経緯。「調査報告書」などを元に作成した
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 一つは、初動対応のまずさ。市は2015年6月に匿名の通報を受けたが、元職員への調査を始める一方で、通報者には連絡を取らなかった()。その後、8~9月に外部のWebサイトに情報流出について報じる記事が掲載され、市は報道発表を行った。発表後に通報者への協力依頼を試みたが、すべて拒否されている。

 検証委員会の嶋倉文裕委員は、「通報者に早期に連絡すべきだった。連絡がなければ無視されたと思い、感情を害する」と指摘した。堺市がもっと早い段階で通報者に連絡を取り、信頼関係を築けていれば、ダメージを最小化できた可能性がある。