富士通が全社を挙げた働き方改革に乗り出した。2017年4月以降、ITを活用したテレワークなどを開始し、業務の生産性向上と長時間労働の是正を目指す。まず本体の3万5000人を対象として段階的に実施し、将来はグループや取引先の企業にも広げる。

 富士通が働き方改革に取り組む理由は、関連する製品やサービスを販売する企業として、効果を自ら実証することだ。田中達也社長が社員に向けて語ったように、「日本を代表するICT企業として、社会的な課題である働き方改革を実践する責務」を示す狙いもある。

 同社社員の残業時間は月平均で約25時間。「今後1年余りのうちに残業時間を2割削減し、残業時間を20時間程度にしたい」(富士通の佐藤彰彦 人事本部 労政部長)考えだ。IT活用を軸に、評価制度の見直しや意識改革にも取り組むことで、柔軟な働き方と成果の両立を図る。

 具体的なIT施策は、「全社員対象のテレワーク勤務」「残業申請システムの導入」「セキュリティを担保した端末の配付」「人工知能(AI)の活用」の四つだ。

富士通が働き方改革に向けて実施するIT施策
富士通が働き方改革に向けて実施するIT施策
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 テレワークでは仮想デスクトップを活用して、場所を問わず同じPC環境で作業できるようにする。データを端末に保存しないシンクライアント端末でセキュリティを担保しつつ、在宅や遠隔地での勤務を可能にする。

 残業は上司への申告制とする。事前申請しない場合、規定の時間以降は原則としてPCを使えないようにする残業申請システムを導入する。ITで業務時間を管理し、効率的な作業の働きかけや、作業の見える化によるムダ取りに活用する。単純作業や繰り返し作業はAIなどを活用して省力化する。