2016年に予定されている電力小売り自由化に向け、日立製作所や日本IBM、TISなど大手ITベンダーが電力事業用のサービスを提供し始めた。ターゲットは新規参入を表明している企業500社以上。顧客情報や電力需給を管理するクラウドサービスなどを用意する。

異業種含む500社以上が参入

 電力小売りの全面自由化により、東京電力や関西電力といった電力10社以外の事業者も、一般家庭などに電力供給できるようになる。新規参入する事業者は、特定規模電気事業者(PPS:Power Producer and Supplier)と呼ばれる。

 2015年3月時点で参入を表明しているPPSは500社以上。日立造船や三井物産、本田技研工業といった“異業種”の企業も参入する予定だ。

 PPSは電力事業に必要なシステムを新たに構築すると予想される。そこでITベンダー各社は、電気事業に必要なサービスの提供を開始した。

 例えば、電力を供給する一般家庭の契約情報や料金計算などするCIS(顧客情報管理システム)や、電力の需要と供給を一致させる需給管理システムの構築サービスである。これらをクラウドサービスで提供するベンダーもある。

PPS向けシステムの専門会社を設立

 PPS向けサービスに本腰を入れているのが日立製作所だ。同社は電力小売り自由化を見据え、2014年3月に東京電力、日立システムズと共同出資して日立システムズパワーサービスを設立した。

 日立システムズパワーサービスは2015年3月に電力事業向けのシステムをクラウド上で提供するサービス「ePower Cloud」を開始した。同サービスのメニューは多彩。順次、CISや需給管理システムなどを提供する。自社事業用の発電設備を保有しているPPS向けに発電管理システムなども用意する。

 同社執行役員の田子友延ビジネスソリューション本部長は、「東京電力がこれまで電力事業で培ってきたノウハウを基に、電力向けシステムを外販する」と話す。2020年までにePower Cloudの売上で累計200億円を目指す。