360度のVR動画作成システムを開発するInstaVRが、企業への360度動画普及にアクセルを踏む。360度動画をデジタルマーケティングに生かすための情報を共有するコミュニティ作りを開始。立体的な音響効果など、同社発の最新技術も訴求する。仕掛け人である小島英揮氏は、同様な手法でAmazon Web Services(AWS)を日本で普及させた実績を持つ。果たしてAWS流は通用するか。

 小島氏は現在、360度VR動画の作成ツールを開発するInstaVRに所属している。視聴者のマウス操作や端末の向きに対応した方向の動画を再生する360度VR動画。同社が提供する作成ツールは、素材となる360度動画データをWebブラウザー上で編集し、様々な端末やOSで再生できるようにする。

 利用者は素材動画の中から再生する部分を選択。動画内に他の動画やWebサイトへのリンクを付けたり、スマートフォンの電話機能を呼び出すボタンを付けたりといった操作を、プログラミングなしに動画へ付加できる。

 360度VR動画の技術自体は目新しいものではないが、企業利用は黎明期だ。主な活用事例はゲームをはじめとするエンターテインメントやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で、デジタルマーケティングなどの企業利用は限られている。

「普通の企業」にも用途は多い

 小島氏が仕掛けるのは、360度VR動画の情報共有や技術者交流を図るコミュニティ作りだ。この3月中にも、360度動画の企業利用をテーマに、ITエンジニアやデザイナー、企業のマーケティング担当者などから成るコミュニティを発足させる。「360度VR動画は製品の利用シーンや発表会の臨場感を伝える有効な手段。ただ、現状は有効な活用方法を見出せていなかったり、自社には関係ないと考えていたりする企業が多い。360度VR動画を体験できるようにして、需要創出を図りたい」(小島氏)。

 同コミュニティで共有するのは企業の活用事例、とりわけできるだけ多くの企業に関係しそうな活用事例を取り上げる。一例が企業の自社紹介動画だ。オフィスの様子や勤務地周辺の環境、社員食堂などの様子を再生することで、写真や既存の動画に比べて、現場の雰囲気を伝えやすいとみる。

 ほかにも企業の従業員向けの技術研修、避難訓練の手順や福利厚生施設の使い方、建設会社が新築する建物の眺望などの事例を取り上げ、盛り込むべき情報や効果的な動画撮影のポイントなどの情報を共有する。自動車や家電といった製品の紹介、スポーツイベントのハイライトシーンなど、消費者向け事業を手掛ける企業に関係する動画も取り上げる。