日本IBMは2016年2月29日、セキュリティ事業の戦略説明会を開催した。攻撃者や攻撃手法などに関する情報「インテリジェンス」をリアルタイムに分析するため、自然言語処理・機械学習システム「Watson」をセキュリティ分野でも活用する将来像を強調。足元では中核製品の専門部隊を立ち上げ、パートナービジネスにも注力するとした。

セキュリティでも軸はWatson

日本IBMの志済聡子CISO(最高情報セキュリティ責任者) セキュリティー事業本部長 執行役員
日本IBMの志済聡子CISO(最高情報セキュリティ責任者) セキュリティー事業本部長 執行役員
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 「組織化された犯罪者は攻撃を高度化し続けていて、システムはクラウドやモバイルにどんどん広がっている。しかし根本的にセキュリティ技術者は足りていない」。日本IBMでCISO(最高情報セキュリティ責任者)を務める志済聡子セキュリティー事業本部長執行役員はセキュリティの世界的な現状をこう話す。

 こうした現状に対して米IBMはコグニティブ(Cognitive)、クラウド(Cloud)、コラボレーション(Collaboration)の頭文字を取った「3C」戦略を打ち出す。2月下旬にラスベガスで開催された米IBMの年次イベント「IBM Interconnect 2016」で発表されたもので、「インテグレーションやインテリジェンスといったこれまでのIBMの取り組みに3Cを組み合わせてアドバンテージとしていく」と志済氏は話した。

 コグニティブでは「Watsonを一つの知見としてセキュリティのレイヤーに取り入れていく」(志済氏)とした。まだ製品としての形は無いが、具体例としては「ログを解析してこれから起こりうる脅威を可視化するインテリジェンス製品」と志済氏が位置付けるSIEM製品「QRadar」とWatsonを組み合わせ、「セキュリティ技術者の次にアクションや、脅威への対応を提案したり、セキュリティ・オペレーション・センターでの攻撃対応を自動化したりして、インテリジェンスをより高いレベルで活用していく」(同)。製品化に向けて今年開発が加速していくという。「IBMにいる7000人のセキュリティ専門家が、『自分たちはどこまで賢くなれるのか』をまずは社内で実証していくような使い方になるだろう」(同)。

Watsonをセキュリティ事業に活用する概念図
Watsonをセキュリティ事業に活用する概念図
出所:日本IBMの説明資料
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