全日本空輸(ANA)は、機体整備業務で使用しているSAPアプリケーション「機体生産管理システム」の操作画面を改良し、2016年11月30日に運用を始めた。SAPアプリケーションの画面を改良する米シンアクティブ製のツール「Liquid UI」を採用したもので、データの入力・参照を始めとするアプリ内の画面点数を86%減らすなどして作業効率を高めたとしている。

Liquid UIを使い改良した後の「機体生産管理システム」の操作画面。従来はタブを切り替えて入力する必要があったが、改良後は各タブの内容が1画面に並べて表示され、画面の切り替えが不要になった
Liquid UIを使い改良した後の「機体生産管理システム」の操作画面。従来はタブを切り替えて入力する必要があったが、改良後は各タブの内容が1画面に並べて表示され、画面の切り替えが不要になった
(写真提供:ANA)
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 機体生産管理システムは、ANAグループの整備士約2000人が使用。整備作業の指示、仕上がりの要求水準の管理、個々の整備士が受ける訓練や審査の管理などが主な用途だ。データ入力などの作業時、マウス操作で複数のタブを切り替えながらキーボードで入力する必要があり、機能の種類によっては完了までに最大20画面も遷移する必要があるなど、入力作業上の大きな課題となっていた。このほか、一部の作業では同じデータを複数の箇所に入力する必要があるなど、作業効率の改善が求められていた。

 Liquid UIは、サーバー側と端末側のパソコンやスマートフォン(スマホ)の双方にモジュールを導入することで、機体生産管理システム自体には手を加えずに操作画面をSAPの標準画面より使いやすくする仕組み。ANAは今回、同システムを運用するサーバーと、整備士が入力作業などに使うパソコンの双方にLiquid UIのモジュールを導入した。具体的な画面の改良点としては、(1)データの入力・参照などの各画面に1クリックでジャンプするためのメニュー画面を追加する(2)入力画面にあらかじめデフォルト値を入力しておく(3)複数箇所に同じデータを入力するフィールドでは、そのうち1カ所に入力すれば他のフィールドにも自動的に反映させる(4)従来は複数のタブを切り替えて入力・参照していた画面を、1画面のスクロールで一括入力・参照可能にする――などが挙げられる。

改良を施す前の、同じ機能の画面。6つのタブが並んでおり、順次切り替えながら入力する必要があった
改良を施す前の、同じ機能の画面。6つのタブが並んでおり、順次切り替えながら入力する必要があった
(写真提供:ANA)
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 操作画面を改良するプロジェクトはANAシステムズとNTTデータ エンタープライズ・アプリケーション・サービス(NTTデータEAS)が共同で実施した。工期は約7カ月。今回の改良プロジェクトにより「改良前は1機能あたり10~20画面あったものを、改良後は1機能あたり1~3画面に集約し、全18機能の画面総数は199画面から27画面まで削減できた。入力時間も、機能にもよるが最大で半分程度に削減されている」(NTTデータEAS)。このほか画面を簡素化したことにより、入力ミスや漏れのリスクも軽減されているとする。

 NTTデータEASはLiquid UIの販売を2014年4月から手掛けており、「Liquid UIの日本国内での導入事例としては、今回のANAが最大規模」(NTTデータEAS)としている。