ホンダが、クルマにとらわれない新領域の創出を担う特命チームを設ける。研究開発子会社の本田技術研究所は2017年2月28日、新組織「R&DセンターX(エックス)」を4月1日に発足させると発表した。

 人工知能(AI)やロボット関連の技術を軸に、エネルギーマネジメントや多様なモビリティーシステムの開発などを手掛けるが、真の狙い別にある。創業時のホンダと同じ「柔軟かつ機敏で野心的な組織」(本田技術研究所の松本宜之社長)を生み出すことだ。

 同社は既に米シリコンバレーやドイツ、埼玉県に先端技術の研究機関を設けているが、今回の新組織は開発のスピードを重視し、運営手法を刷新したのがポイントだ。例えば「従来の研究機関とは切り離して機能別にプロジェクトを立ち上げ、(研究の)”出口”を明確にする」(松本社長)という。要素技術の基礎研究から段階を経て事業にこぎつけるのではなく、新領域の技術やアイデアを次々にふ化させ、検証を繰り返しながら短期間で育てていく方針だ。

 ホンダは国産ヒト型ロボットの草分けである「ASIMO(アシモ)」などロボット関連の技術やデータを蓄積しているが、AIなどソフトウエア領域の技術開発や新事業の創出ではIT企業や大学の研究機関が先行している。そこで新組織では、外部の知見やノウハウを積極的に取り込む仕組みを用意することにした。

 まず新組織のアドバイザーとして、AIの世界的権威で米スタンフォード大学名誉教授のエドワード・ファイゲンバウム博士と、産業再生機構の最高執行責任者(COO)としてダイエーやカネボウの再建を担当した経験を持つ経営共創基盤の冨山和彦代表取締役CEO(最高経営責任者)を招いた。

 今後も企業、個人を問わず、優れたアイデアや技術を持つプレーヤーを呼び込み、R&DセンターXの活動を活性化させる。本田技術研究所が東京・赤坂の高層オフィスビルで2016年9月に開設した「HondaイノベーションラボTokyo」が窓口となる。

本田技術研究所が東京・赤坂に設けた「HondaイノベーションラボTokyo」
本田技術研究所が東京・赤坂に設けた「HondaイノベーションラボTokyo」
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