米グーグルは現地時間2017年2月21日、同社のIaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)「Google Compute Engine」で、仮想マシンにGPU(グラフィックス処理プロセッサ)を付加できるβ版サービスを始めたと発表した。

 グーグル、米マイクロソフト、米アマゾン・ウェブ・サービスの3大クラウドで、GPU提供サービスがそろったことになる。価格競争に火が付けば、ディープラーニング(深層学習)を含む機械学習へのGPUの適用がさらに進みそうだ。

 付加できるのは、GPUボード「NVIDIA Tesla K80」に搭載されたKepler世代のGPU。1つの仮想マシンにGPUを1~8個(ボード換算で1/2~4枚)追加できる。

 1GPUの利用価格は0.7ドル/時間から。仮想マシンの価格を含めても、TeslaシリーズのGPUを時間単位で提供できるサービスの中では、単精度1テラFLOPS当たりの価格は最安値となる見通しだ()。

表●主なGPU提供サービスの比較
表●主なGPU提供サービスの比較
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 かつてGPUを提供するIaaSといえば、ほぼAmazon Web Services(AWS)一択だった。国内でも、リクルートテクノロジーズやディー・エヌ・エー(DeNA)が現在、深層学習を中心としたAI技術を自社サービスに組み込むため、AWSのGPUインスタンスを活用している。

 ここ数カ月で、AWS以外のGPU提供サービスが拡充した。まず2016年12月には、Microsoft Azureが「Tesla M60」「同 K80」の提供を開始。Google Compute Engineは、今回β版を提供した「同 K80」に加え、近いうちに「同 P100」、米AMDの「FirePro S9300」の提供を始める計画だ。既にDeNAはK80提供サービスのβ版を利用しているという。

 2016年からPreferred Networksの協力を得てGPUサーバー貸し出しサービス「高火力コンピューティング」を提供していたさくらインターネットは、「NVIDIA TITAN X」を4枚載せたGPUサーバーを1時間267円で提供する新サービスを2017年3月中に始める。

 従来は初期費用を支払った上で月額で課金する方式だった。このため、時間当たりのコスト効率は優れるものの、気軽に利用しにくく、こまめにインスタンスを消してコストを削減することもできなかった。

 TITAN Xは、機械学習に加えてコンシューマのゲームPC用途も想定しており、業務用のTeslaシリーズより単価が低い。ECC(誤り訂正)メモリーなどTesla特有の機能は使えないが、単精度1テラFLOPS(1秒当たり浮動小数点演算性能)当たりコストを抑えられる利点がある。