「ベアメタルクラウド」を新サービスとして発表するベンダーが相次いでいる。2016年の後半から2017年1月にかけて米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)、米オラクル、米パケット・ホストなどが発表した。米マイクロソフトも「提供する計画がある」と、クラウド&エンタープライズグループジェネラルマネージャーを務めるマーク・サウザ氏が2017年1月16日に明かしている。

米マイクロソフトでクラウド&エンタープライズグループジェネラルマネージャーを務めるマーク・サウザ氏。2017年1月16日に開催した「SAP HANA on Azure」の発表会で、ベアメタルクラウドを提供する計画があることを明かした
米マイクロソフトでクラウド&エンタープライズグループジェネラルマネージャーを務めるマーク・サウザ氏。2017年1月16日に開催した「SAP HANA on Azure」の発表会で、ベアメタルクラウドを提供する計画があることを明かした
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 ベアメタルクラウドは、物理サーバーが使えるクラウドサービス。仮想化せずにサーバーを使うため、オンプレミスで利用中の仮想マシンをそのままクラウド上に持ち込める。日本IBMやNTTコミュニケーションズなど、2016年より前からベアメタルクラウドを提供する企業は少なくない。

 毎年のように新しいサービスを開発・提供してきたクラウドベンダーが、今更になってベアメタルを提供する狙いは、オンプレミスで動く業務システムをクラウド上へ引き込むことだ。業務システムのクラウド移行が本格化すると見たベンダーによる顧客獲得合戦が始まっている。

クラウド上でオンプレミスの非機能要件満たす

 オラクルは2016年9月、「第2世代」のIaaSとしてベアメタルクラウド「Bare Metal Cloud Services」を発表。2017年1月には、データベースのPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)「Oracle Database Cloud Service」でベアメタルを選べるようにサービスを拡張している。

 日本オラクルの佐藤裕之クラウド・テクノロジー事業統括 Cloud/Big Data/DISプロダクト本部本部長は「エンタープライズシステムに必要なクラウド基盤をゼロベースで考え直した結果、ベアメタルが必要だという結論に達した」と話す。

 ベアメタルは「オンプレミスで動いているシステムにとって、可用性とパフォーマンスのために必要」と佐藤本部長は話す。仮想マシンサービスでは、基盤のチューニングなどに制約があり、オンプレミスでの手法が通じないこともある。そのため高速な動作が必要なソフトは、あえてサーバーを仮想化せずに使うケースもある。業務システムでは可用性や性能といった非機能要件がハードウエアによって担保されていることが多く、既存のシステムを継続して使うには仮想化していない環境が必要だという。