個人情報にひも付いた行動履歴や購買履歴などのITデータを、個人の預託に基づいて一元管理する制度、あるいは事業者のこと。政府が、個人のITデータを安心して活用できる環境を整備する目的で検討している。

 ネットショッピングの購買履歴、駅やリアル店舗で使う電子マネーやポイントカードの利用履歴、モバイル端末の位置情報を使った移動履歴など、私たちは日常生活で行動した痕跡を、大量のITデータとして記録し、保管している。

 いわば“個人のログ情報”ともいえるこうしたITデータを、企業や業界の垣根を越えて流通させられるようにする検討が始まった。政府が2016年9月16日に立ち上げた「データ流通環境整備検討会」である。この検討会で議論されているテーマの1つが情報銀行だ。

新たな成長市場の創出を狙う

 そもそも、なぜ個人のログ情報を流通させる検討が始まったのだろうか。きっかけは、政府が2016年6月2日に閣議決定した「日本再興戦略2016-第4次産業革命に向けて-」だ。

 政府はIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)などがブレークスルーとなる第4次産業革命を促し、新たな成長市場を創出して日本経済を再興させようとしている。この戦略を実現するには、第4次産業革命を担うあらゆる企業や団体がデータを活用できるようにする必要がある。それが、個人のログ情報を含めたデータ流通の環境を整備することだったわけだ。

 具体的には、ある事業者が管理する個人のログ情報を、別の事業者でも活用できるようにする。例えば、ECサイトから受け取るお薦め商品の案内メール。現在は、発信元のECサイトが管理する購買履歴や閲覧履歴に基づいて、お薦め商品が決定される。

 それがデータの流通環境が整うと、携帯電話事業者の移動履歴、他のECサイトや旅行サイトの閲覧履歴、購買履歴なども合わせて分析できるようになる。これによって、「最近旅行した観光地で生産された商品をお薦めする」といった案内を実現できるようになる。

 データの流通環境が整うことで、顧客は、趣味や嗜好、ニーズに最適化された情報やサービスを受けられるようになる可能性がある。一方、やり取りするなかで情報が漏れたり、自分がデータを渡したくない事業者にまでデータが行き渡り、やり取りされてしまったりする懸念がある。