大手通信事業者のKDDIが、クラウドを基盤とするシステム開発や運用を手掛けるクラウドSI事業へのシフトを急いでいる。2017年1月25日、クラウド専業ITベンダーのアイレットを2月下旬に子会社化すると発表。IoT(インターネット・オブ・シングズ)ビジネスに参入する企業などを対象に、クラウド上のシステムの設計開発や運用保守から通信インフラの提供までワンストップの支援体制を整えるのが主な狙いだ。

 「当社に不足していたクラウドSIのノウハウを取り込み、法人向けITサービスの競争力を高める。特にIoTでは多種多様なデータを大量に処理する必要があるため、クラウドを基盤にシステム構築する顧客ニーズが大きい。そこに応えていく」。KDDIの新居真吾理事・バリュー事業本部バリュー事業企画本部長はアイレット子会社化の理由をこう説明する。アイレットは、AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)を基盤としたSI事業を営む「コンサルティングパートナー」のうち、国内で7社しかいない最上位「プレミア」の取得ベンダーの1社だ。

 スマートフォン(スマホ)市場の停滞などを背景に、KDDIは事業の多角化を進めている。法人分野で次の成長の柱と位置付けるのがIoTだ。同社の顧客にIoTソリューションを売り込めば収益の上積みが見込め、IoTの提案をきっかけに新規顧客の開拓もしやすくなる。IoTでは端末から無線でデータを集めることが多く、本業である通信ビジネスの契約増にもつながる。

専門分野で強い企業と相次ぎ協業

 IoTソリューションにはKDDI以外にも様々なITベンダーが取り組んでいるが「端末や通信回線とシステムを個別に調達するケースが多かった」(KDDIの新居氏)。これらを1社で提供できれば競争力が増すとKDDIは判断。新サービスに必要な機能を短期間で揃えるため、M&A(合併・買収)などの手法で他社と積極的に連携していく道を選んだ。2016年12月にはIoT専業のMVNO(仮想移動体通信事業者)であるソラコムと共同で、IoT専用の携帯回線サービス「KDDI IoTコネクト Air」の提供を始めた。

KDDIが提供するIoTビジネス支援サービスの案内サイト
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