これまでiPhoneやiPadを大量導入する際、IT管理者の前に立ちはだかってきた大きな壁があった。「端末のキッティング(デバイスを使用可能にする事前準備)」作業だ。これを一切不要にする画期的なサービス「Device Enrollment Program(DEP)」がこの2月からいよいよ国内でも利用できるようになった。これにより企業によるiOS端末の大量導入が2015年、さらに加速度的に進むかもしれない。

 アップルによるDEPのサービス提供自体は国内でも2014年11月に始まっていた(関連記事:iPhone/iPadのキッティング不要サービス、直販以外に正規取扱店やキャリアも可能に)。しかし、利用に当たってはDEPに対応する「MDM(モバイルデバイス管理)」製品の導入が不可欠であり、そちらの準備がまだ整っていなかった。具体的には、ごく一部の海外製品を除き、国内で入手可能なMDM製品の多くがDEPに対応していない状況だった。

 状況が変わったのは2015年1月末。主要な国産ベンダー2社(アイキューブドシステムズとAXSEED)のMDM製品がほぼ同時に製品をアップデートしDEPに対応した(画面1および関連記事:AXSEEDのMDM製品が米アップルの「DEP」に対応、企業のiOS端末大量導入が容易に)。これにより、ようやく国内でもDEPが本格的に動き出した。

画面1●アイキューブドシステムズの「CLOMO MDM」(管理画面) 2015年1月30日にDEP対応版をリリースした
画面1●アイキューブドシステムズの「CLOMO MDM」(管理画面) 2015年1月30日にDEP対応版をリリースした
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「アップルが2014年11月に国内提供開始を明らかにして以降、ユーザー企業はもちろん、通信事業者や販売代理店からも『いつ対応するのか』という問い合わせが一気に増えた。期待が非常に高まっているのを実感し、開発を急いだ」(AXSEEDの田中伸一 モバイルパートナービジネス部ゼネラルマネージャー)。

 一般的な企業や教育機関向けMDM製品(iOS版)で「この先DEPに対応しない」という選択肢はほぼ考えられないため、先行する2社を追う形で今後、競合ベンダーも続々とDEPに対応するのは確実だ。これにより今春から夏以降、国内企業ユーザーが気軽にDEPを利用できる環境が整い、iOS端末を大量導入する多くの企業ユーザーがDEPを使うことになりそうだ。

 ただし、DEPが見込み通り“離陸”できるかはまだ課題が残っている。それはDEPで利用できるiOS端末が入手しにくい点だ。現時点では、アップルから法人契約でiOS端末を直接購入すればDEPを利用できる。一方、アップルから直接購入するのではなく、通信事業者や代理店経由で端末を購入したいという企業ユーザーも多いだろう。だが2月上旬現在、こちらの購入ルートは開かれていない。

 ではいつ頃購入できるようになるのか。これに関して取材で得た関係者の話を総合すると、「現在、各社ともDEPに参加するために必要なシステムを構築し始めている段階」であり、「準備が整い次第、提供を始める予定」だという。