日本のITベンダーやFA(ファクトリーオートメーション)機器メーカー8社と、大手製造業5社が工場の製造現場での無線IoT(インターネット・オブ・シングズ)導入拡大に向け、プロジェクトを推進している。名称は「フレキシブル・ファクトリー・プロジェクト」で、2017年3月までに成果を公表する。

写真●「フレキシブル・ファクトリー・プロジェクト」の工場内での実証実験の様子
写真●「フレキシブル・ファクトリー・プロジェクト」の工場内での実証実験の様子
(出所:情報通信研究機構)
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 オムロン、国際電気通信基礎技術研究所(ATR)、NEC、NEC通信システム、サンリツオートメイション、富士通、富士通関西中部ネットテック、村田機械の8社が参画し、2015年春から約2年かけてトヨタ自動車など大手製造業5社の工場で実証実験を実施した。全体の分析は情報通信研究機構(NICT)が担当する。日本の主要企業を巻き込んだ官民共同の“オールジャパン”体制で工場のIoT化を促進する。

 家庭やオフィスと環境が異なる工場では、無線通信の挙動に未解明な点が多い。プロジェクトではトヨタ自動車の堤工場(愛知県豊田市)や三菱重工工作機械本社工場(滋賀県栗東市)など稼働中の工場で延べ13回の実証実験を行った(写真)。成果として、「製造中の製品が無線通信を遮蔽する」といったよく見られる問題点を特定したという。実験から得られたノウハウは小冊子にまとめて公開する。

 工場内機器のIoT化のために無線通信を使いたいという要望は日本の工場で根強い。NICTワイヤレスネットワーク総合研究センターワイヤレスシステム研究室の板谷聡子主任研究員は、「工場の現場の話を聞くうちに、無線でなければ難しい用途が多数あると分かってきた」と話す。