近い将来、残業時間を巡って悩まされるIT企業やユーザー企業のIT部門が増えそうだ。政府が開催中の「働き方改革実現会議」を通じて、残業時間の上限を設定する法案をまとめる方針だからだ。
一部報道によると、政府は残業の上限を月間平均60時間、年間合計720時間までとする原案を、働き方改革実現会議の会合で2017年2月中旬にも提示する。
原案のポイントは、(1)1カ月平均で60時間、年間720時間を上限とする、(2)繁忙期においては月間最大100時間まで認める、(3)前後の月との平均では80時間以内まで認める、の三つという。政府は同会議で2017年3月中に意見を取りまとめ、法案を作成する方針である。
現状、労働基準法36条に沿って労使が協定を結び、特別条項を付ければ、企業は従業員に事実上青天井で残業をさせられる。政府案は、過労死につながりかねない長時間残業に歯止めをかけるためのものだ。
ただし、政府案の残業60時間制限が定められ、経営側が特に対策を講じない場合、納期厳守を要求されがちな開発の現場などでは、新たな難題が降りかかることにもなる。「納期は死守、ただし残業はするな」と命じられているようなものだからだ。
トラブルでプロジェクトが“炎上”しても、何も手を打てないといった事態が起こりかねない。この残業60時間制限が、プロジェクトの命運を左右するかもしれないのだ。
「残業は月間20時間」は本当か?
近年は、大手を中心にIT企業各社で残業削減の取り組みが進みつつある。情報サービス産業協会(JISA)によると、会員IT企業の2015年度の時間外労働は、平均で年間約280時間。1カ月当たりで換算すると月間20時間余りとなる。この数値を見ると、60時間という上限が課せられても問題なさそうに思えるかもしれない。
だが、IT企業のすべての職場が残業時間を正直に報告しているとは限らない。事実、ある大手ITベンダーの幹部は「開発現場の実態と乖離している」と打ち明ける。また、あくまで平均時間のため、長時間残業が常態化している現場が埋もれている可能性が高い。
あなたの残業の実態はいかがだろうか。また、政府案の通り1カ月の残業を60時間以内に制限する法律が施行された場合、あなたやあなたの職場はどのような影響を受けそうか。ぜひとも以下のアンケートにご意見をお寄せいただきたい。
残業時間に関する緊急アンケート
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