米Oracleが2017年1月に実施したクラウドコンピューティング向けのライセンス体系の変更が波紋を呼んでいる。Amazon Web Services(AWS)といった、米Oracleが提供する以外のクラウドサービスで「Oracle Database(DB)」などを利用する場合、これまでと比較してライセンス費用が最大2倍に値上がりする可能性があるからだ。米Oracleの1月の発表と同時に、日本企業への適用も始まっている。

 ライセンス体系の変更の対象となるのは、AWSが提供するコンピューティングサービス「EC2」と、データベースのマネージドサービス「RDS」、そして米Microsoftのクラウドサービス「Microsoft Azure」上で、Oracle DBなどの米Oracleのソフトウエアを利用するケースだ。

 大きな変更点の一つが、ライセンス費用を判定する際に利用する「マルチコアプロセッサ向けの適用係数」から、他社のクラウドサービスを外した点だ。Oracle DBの導入支援サービスを提供するITベンダーの技術担当者は、今回の変更により「必要となるライセンス費用が最大2倍になるケースが出てくる」とみる。

Enterprise Editionの利用者に影響大

 米Oracleは「クラウドコンピューティング環境におけるOracleソフトウエアのラインセンス」という文書の中で、他社のクラウドサービス向けのソフトウエアのライセンスの取り扱いについて規定している。

 米OracleのDBなどのソフトウエアは基本的に、物理的なプロセッサ単位で必要となるライセンス費用を計算する。クラウドコンピューティング環境でもこの考え方は踏襲している。しかしクラウドの場合は仮想環境での利用となるため別途、課金に関する考え方を示す文書を用意している格好だ。

 1月に更新された文書では、以前と同様にAWSとAzureを「承認されたクラウド環境」と定義。一方で、両クラウドで米Oracleのソフトウエアを利用する場合について、「『Oracle Processor Core Factor Table』は適用されない」と新たな考え方を示した。

 Oracle Processor Core Factor Tableは、「マルチコアのプロセッサの場合、いくつのコアを一つのプロセッサとして考えるか」を示した文書で、適用係数を提示している。これまでAWSで利用する場合は、「Intel Xeon」プロセッサの適用係数である0.5を用いていた。例えばAWSで8仮想コアを利用する場合は、「8×0.5(適用係数)となり、4プロセッサ分のライセンス料金が必要になる」といった具合だ。

 これが新たなライセンス体系の場合、「0.5」という適用係数が使えないことになる。「単純計算では必要なライセンス料金が2倍になる。影響を受けるのは、Oracle DBをEnterprise Edition(EE)で利用しているユーザーだ」と前出のITベンダーの技術担当者は話す。EEはOracle DBの最上位のライセンスとなる。「業務システムではEEを利用しているケースが多く、今回の変更を受ける企業は多い」と技術担当者はみる。