日本通信は2017年2月1日、ソフトバンクの携帯電話回線を活用した格安SIMのサービスを3月22日に始めると発表した。

 同社によると、NTTドコモ回線における格安SIMの浸透率は15.5%に対し、ソフトバンク回線では0%。格安SIMの認知度と需要は急速に高まっており、ソフトバンクの浸透率は1~2年程度でドコモ水準に達する。上記の浸透率をソフトバンク回線に当てはめると、市場規模は400万人。初年度に4分の1の100万件を獲得できれば約50億円の売上高を見込める――。

日本通信が想定するソフトバンク回線を活用した格安SIMの潜在需要
日本通信が想定するソフトバンク回線を活用した格安SIMの潜在需要
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 日本通信は2017年2月3日の決算説明会でこんな皮算用を披露した。2017年3月期の業績はあてにしていたソフトバンクとの相互接続が大幅に遅れ、営業損益が21億4700億円の赤字で終わる見通し。だが、ソフトバンク回線の格安SIM販売効果により、2018年3月期は「売上高で60億円、利益で6億円程度の黒字」(福田尚久社長)と一気の回復をもくろむ。

最初の1~2年が大きな勝負

 日本通信の狙いは、ソフトバンクの虎の子であるiPhone/iPadのユーザー。ソフトバンクは他社に先駆けて取り扱いを始めたこともあり、契約者(2016年9月末時点で約4308万件。このうち、通信モジュールなどを除く主要回線は約3230万件)に占めるiPhone/iPadの比率が特に高いとされる。近年では端末の買い替えサイクルが長期化する傾向も見られ、2016年5月にSIMロック解除が義務化される前のiPhone/iPadを保有するユーザーは多いと日本通信はにらむ。

 当初は競合が存在しない点も大きな強みだ。ソフトバンク回線を用いた格安SIMは存在するものの、現状ではSIMロック解除したソフトバンク端末でなければ組み合わせて利用できない制約がある。例えば飛騨高山ケーブルネットワークがソフトバンク回線を活用して2016年8月に「Hitスマホ」を始めたが、同制約を残念がる声が多かった。今後は他のMVNO(仮想移動体通信事業者)が日本通信に追随してくるが、先行者利益を確実に享受できる。

 ソフトバンク回線は個人ユーザーに限らず、企業でも一定の需要がある。例えば、NTTドコモとソフトバンクの両方の回線に対応したデュアルルーターを使い、障害時に接続先を自動的に切り替えたり、品質の高いほうに優先的に切り替えたりする用途がある。今後、導入の拡大が見込まれる「IoT(Internet of Things)ではカバレッジが最優先。NTTドコモやソフトバンクなどの回線を組み合わせたマルチキャリア展開により、個別の携帯電話事業者より広いエリアをカバーできる」(日本通信の福田社長)。iPhone/iPad向けはとにかくスピード勝負だが、企業向けはじわじわと伸びを見込める。