中堅中小企業向けのクラウドERP(統合基幹業務システム)が相次ぎ登場している。インフォアジャパンは2015年1月29日に、会計、人事機能などをカバーしたクラウドERP「Infor CloudSuite Business」を発表、日本オラクルも会計や調達などの機能を持った「Oracle ERP Cloud」を1月26日に、日立システムズは1月14日に主に生産・販売管理機能に絞った「FutureStage クラウドサービスモデル」の提供を開始した。

 3社のサービスに共通するのは、中堅中小企業の基幹系システムを構築するための機能をSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)として提供することだ。特にインフォアと日立システムズは、生産管理や販売管理といった機能を含めたクラウドERPを、特定の業種向けに絞り込んで提供する。

 これまで多くのクラウドERPが主要な機能として提供してきた、会計や人事、CRM(顧客関係管理)などは、業種や企業間で業務のやり方に差が少ないため、アドオン(追加開発)ソフトなどを利用しないクラウド型でも機能を提供しやすかった。

 一方で今回、インフォアや日立システムズが提供する生産・販売管理は、企業や業種ごとに業務のやり方の差が大きい。サーバーを設置して導入するオンプレミス型のパッケージで生産・販売管理を導入する場合でも、アドオンソフトが多く発生しやすい領域だった。

業種を絞ることで「すぐ使える」を実現

 追加開発せずにすぐに導入できるクラウドERPのメリットを生産・販売管理の領域でも実現するため、インフォアと日立システムズは、「製造業」などのくくりよりも業種を細かく絞った形でクラウドERPを提供する()。

 より細かい業種に対応したサービスを出すことで、「これまでクラウドERPが向いていないと考えてられていた業種や業務にも販売して、販路を拡大していきたい」と日立システムズ 産業・流通事業グループ 産業・流通営業統括本部企画部の中島義博担当部長は強調する。

表●詳細な業種向けのクラウドERPの例
サービス名(販売会社)概要料金
FutureStage クラウド型 金属加工業向け生産・販売管理システム(日立システムズ)金属加工業向け。期間別に材料の単価を設定したり、調達の材料単位と在庫の材料単位を変換したり機能を搭載。使用する金型の管理機能も用意月額16万5000円から*
FutureStage クラウド型 食品卸向け販売管理システム(日立システムズ)食品卸売り業向け。賞味期限の管理や商品のトレーサビリティ機能、先入れ先出しの考え方に基づいた在庫自動引当機能などを提供月額16万5000円から*
Infor CloudSuite Automotive(インフォアジャパン)自動車業界向け。自動車業界固有の内示・確定機能やトレーサビリティ機能を用意。世界各地の自動車業界のEDI形式にも対応1ユーザー当たり、月額2万円
Infor CloudSuite Industrial(インフォアジャパン)組み立て製造業向け。部品メーカーや生産機械メーカーを想定し、ジャスト・イン・タイム(JIT)形式の納入や物流管理機能を備える1ユーザー当たり、月額1万5000円
*料金にはソフトウエア利用料金、データベース・ソフトウエア保守、回線費用保守、情報提供サービス、エンハンス対応サービス、問い合わせ対応基本サービス、クラウド基盤使用料などが含まれる。別途初期費用(110万円から)が必要