相乗りタクシーの実験が始まって2週間、事業者の当初の想定とは異なる需要が浮かび上がってきた。実験の途中経過から見えてきたのは終電難民ではなく街中のチョイ乗りだ。海外ライドシェア事業者の攻勢や需要減と、課題が山積するタクシー業界。繁閑に応じて料金を変える「ダイナミックプライシング」をはじめ、見落としていた需要を掘り起こせるか。

 相乗りを提供するタクシー会社は大和自動車交通と日本交通。記者は両社の相乗りアプリをスマートフォンにインストールし、2018年2月1~3日の夜に東京駅八重洲口から足立区方面へ一緒に向かう同乗者を募集してみた。しかし時間帯や行き先の条件が合わなかったのか相乗りは1度も成立しなかった。

想定と異なる需要

タクシー業界は利用者増に知恵を絞る
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 記者は残念ながら相乗り体験ができなかったが、大和自動車交通によれば相乗りマッチングは着実に成立しているという。同社と日本交通は以前から独自の配車アプリを提供してきた。実験は国土交通省との共同で2018年3月11日まで行う。当初、国土交通省は終電後やイベント後の帰宅でタクシーの相乗りに需要があるとみていた。

 ただ、その見立ては外れるかもしれない。現在の状況について大和自動車交通タクシー課の担当者に聞くと、「終電後や深夜の利用は当初の想定より少なく、むしろ昼間や夕方の相乗りが成立している」という。帰宅時の比較的距離が長い利用ではなく仕事中などにタクシーで街中を移動する、いわばチョイ乗りだ。「乗客にとってはいきなり長距離を他人と相乗りするのは不安で、様子見をしているのかもしれない」(同)。