ITアーキテクトに関する公式の教科書と呼ぶべき書籍が日本に初お目見えした。「ITABoK(IT Architecture Body of Knowledge、アイティーエーボック) Version2」日本語版である。ITアーキテクトのスキル定義や育成を支援するIasa(アイサ)日本支部が2017年1月20日、提供を開始した。

 ITABoK日本語版は約500ページから成り、ITアーキテクトの定義や、備えるべき知識・スキルに加えて、ITアーキテクトを企業でどう活用するか、クライアントとどう交流するかに関する「エンゲージメント」やキャリアパスなどをまとめている。

 ITABoKでは、ビジネス戦略の開発・実現をITアーキテクトが備えるべきスキルの重要な柱とするなど、ITアーキテクトの役割を広く定義している。プロジェクトマネジメントの「PMBOK」やビジネスアナリシスの「BABOK」と同様、欧米発の「BOK」の翻訳でもあり、ITABoKの内容は日本の実態と異なっていたり、企業への適用が困難な部分があったりする可能性がある。

 それでも定義があいまいになりがちなITアーキテクトの全体像を把握した上で、自社なりのITアーキテクトの役割を検討し、活用や育成の方針を考える際に役立ちそうだ。

五つの共通スキルを定義

 ITABoKでは、ITアーキテクトを「ビジネスのためのテクノロジーの戦略家」と定義する。クライアントや雇用主に好ましい結果を生み出すために、新しいテクノロジーの適用方法を常に発見できる専門家あるいは専門家集団であり、そのためにビジネスやソフトウエア、インフラストラクチャー、情報、ソリューションの最適化、エンタープライズ・テクノロジー戦略に関する知識やスキルを生かす。

 ITアーキテクトが持つべき共通スキルとして、五つを挙げている(

図●ITアーキテクトが持つべき共通スキル
図●ITアーキテクトが持つべき共通スキル
ITABoK日本語版を基に日経コンピュータ作成
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 一つ目の「ビジネステクノロジー戦略」は、テクノロジーを通じたビジネス戦略の開発・実現に使用されるスキルを指す。ビジネスの基本、戦略の開発と適正化、ビジネスの評価、要件の発見と制約分析、などで構成する。ITABoKでは「アーキテクチャースキルの最も重要な柱」と位置付けている。