富士通は4月から始まる2018年度の組織改編で、塚野英博副社長(最高財務責任者:CFO)が担当しているグローバルコーポレート部門を大幅に拡充・強化する方針であることが明らかになった。

 同社の組織は部門の下にグループ・本部を配置する構造。まず、2000人弱のグローバルマーケティング部門を「グローバルマーケティンググループ(4月からのグループ長:山田厳英執行役員)」と改称し、グローバルコーポレート部門に編入する。次に、社長直轄だったコーポレートコミュニケーションのうち経営戦略室(同室長:川上博矛執行役員常務)と広報IR室(同室長:山守勇執行役員)をグローバルコーポレート部門に吸収する。

 さらに、営業やサービス、プラットフォームなど各ビジネス事業部門の「事業・事業推進・人事・人材開発・経理」など全てのビジネス管理機能の主レポートラインを、従来の部門長からグローバルコーポレート部門に変更し、グローバルコーポレート部門が全社横串で管掌するという内容。グローバルコーポレート部門には4月から1専務、4常務、3執行役員、3常務理事が配置される。これまでは、1常務、2執行役員、3常務理事だったから、大幅な増強となる。

 グローバルコーポレート部門の拡充・強化は、テクノロジーの進化で様々な業界・境界で発生するデジタルビジネスを推進するために不可欠なマーケティングやヒト・モノ・カネの配分機能を統合・集中管理することによってスピーディに、かつ柔軟な対応を狙う一方、ガバナンスを強化するという背景がある。

 しかし、今回の本社管理部門の大幅増強・強化方針について、社内幹部や富士通OBからは早くも、この「管理の集中肥大化」を懸念する声が出始めている。富士通は1990年代末の秋草直之社長の下で財務・経理・経営企画担当となった高谷卓取締役(後副社長)時から本社管理部門が特に強化され、多数の富士通役員OBによると「ヒト・モノ・カネといった兵糧の締め付けが厳しくなり、富士通の野武士気質が徐々に削がれていった」と、今の低迷する富士通業績の元凶が本社管理の強化だったとする一方で、最近の企業不祥事頻発の状況下では本社管理部門によるガバナンス強化は時代の流れで避けられないとする見方もある。

 例えば、東芝のある本社経理出身者によると、各事業部門の経理人材は本社から派遣し、本社が人事権を握っていた。しかし、西田厚聡社長時から事業部門の経理は本社から独立組織化し、それが結果的に不正経理の温床になったという指摘もある。1経理の問題でも、組織改革いかんによって将来に禍根を残すことにもなりかねない。富士通のある幹部は「1月31日の取締役会で新体制にどういう決議がなされるか注目している」という。なお新組織としては、営業部門に顧客とデジタルビジネスを共創する「共創ビジネスグループ(グループ長:山口裕久執行役員常務)」が発足する。 

■変更履歴
公開当初、最終段落で当時の東芝の社長名が誤っておりました。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2018/1/30 12:00]