政府は2016年2月上旬頃に、食料品などの消費税負担を軽くする軽減税率制度を盛り込んだ税制改正法案を国会に提出する見通しだ。今後国会では、低所得者対策としての実効性や、小売店・食料品店に与える影響について、与野党で論戦が繰り広げられることになる。

 軽減税率制度の影響は、POSレジや券売機の改修、帳票の書式変更など情報システムに絡むものが多く、その範囲は大企業から個人事業主まで幅広い。以前から軽減税率制度について自社サイトで情報を発信している日立コンサルティングで公共コンサルティング本部 シニアマネージャーを務める白井岳彦氏に、軽減税率がITにもたらす影響について聞いた。

(聞き手は浅川 直輝=日経コンピュータ


政府が検討している軽減税率の概要を教えてほしい。

 2015年末時点での制度案によると、酒と外食を除く食料品と、週に2回以上発行される新聞の定期購読料が軽減税率の対象として、現在の税率8%のままに据え置かれる形になる。

 平成26年家計調査を基にした分析では、軽減税率による負担軽減額は、低所得者層で約7000円ほど。高所得者層の方が軽減額は大きくなる()。低所得者対策としての効果は小さい見込みだ。

(出所:日立コンサルティング)
(出所:日立コンサルティング)
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小売店や飲食店などが軽減対象範囲を判断する上で、気を付けた方がよい点は。

 「外食」を除く飲食料品が対象、という部分は注意が必要だ。飲食料品店などでテイクアウトする場合の税率は8%だが、店内で飲食するイートインの場合は10%が適用される。

 これはファストフードに限らず、料理・飲食業のお店全てが対象となる。例えば、寿司屋に持ち帰り用の折り詰めを頼めば8%の軽減対象になるが、店内で飲食すれば標準の10%が適用される。ラーメン、そば、ピザなどの出前やデリバリーは「外食」ではなく「内食」として軽減対象になる。

 このほか、お菓子付きのおもちゃ、いわゆる「食玩」は軽減対象となるが、医薬部外品となる栄養ドリンクなどは軽減対象外となる見込みだ。