NTTドコモは2016年12月、MNP(モバイル番号ポータビリティー)の転入出が単月で過去最高の転入超過を記録した。2016年4~12月累計でも4万件近い転入超過となったもようだ。MNPの制度が始まった2006年10月以降、同社は2015年度末までに累計650万件程度の転出超過と苦しんできた()。悲願となる通期ベースの転入超過がいよいよ見えてきた。

図●NTTドコモにおけるMNP(モバイル番号ポータビリティー)の転入出の推移
図●NTTドコモにおけるMNP(モバイル番号ポータビリティー)の転入出の推移
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 NTTドコモの転入超過は、格安スマホに代表されるMVNO(仮想移動体通信事業者)の貢献分が大きい。MVNOの多くはNTTドコモの回線を活用しており、KDDI(au)やソフトバンクのユーザーが同MVNOに乗り換えると、数字上はNTTドコモへの転出として計上される。

 総務省が2016年4月に運用を始めた「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」により、携帯電話大手3社間の流動性は大幅に低下した。従来のキャッシュバックに依存した新規獲得は封じられ、大手3社の顧客がMVNOにじわじわと抜けていく状況が続いている。当初は大手3社によるガイドラインの“抜け穴探し”も見られたが、総務省が行政処分を下した2016年10月頃からこの傾向が顕著となってきた(関連記事)。

 NTTドコモも顧客の囲い込みを強化している。家族契約を訴求した新料金プランや光回線とのセット割に加え、「更新ありがとうポイント」や「ドコモ 子育て応援プログラム」などで顧客還元を手厚くし始めた。同社の2016年7~9月期の解約率は0.53%。KDDIの0.72%(パーソナルセグメント)やソフトバンクの1.06%(主要回線)に比べ、突出して低い。

 総務省が1月10日に新たに策定した「モバイルサービスの提供条件・端末に関する指針」により、今後はMVNOへの移行障壁がさらに下がる(関連記事)。上記の傾向に拍車がかかり、MNP市場で「独り負け」とされてきたNTTドコモが一転、「独り勝ち」を享受する流れも十分に考えられそうだ。「総務省の指針は最大手のNTTドコモに著しく有利」。KDDIとソフトバンクからはこんな恨み節ばかりが聞こえてくる。