商業施設の施工大手、乃村工藝社はIoT(インターネット・オブ・シングズ)を活用した飲食店向け注文受け付けシステムの開発を進めている。客のスマートフォンで事前に注文を受け付け、来店次第すぐ料理を提供する「待ち時間ゼロ」の接客を実現する。

 採用したのは米マイクロソフトCEO(最高経営責任者)も賞賛した日本ベンチャー、ボクシーズのIoT技術だ。人手不足や行列解消が課題となっている飲食店業界に向け、年内にも実用化する。

テーブルクロスが「ビーコン」に

 オフィス街のランチタイム。「今日は何を食べようかな」。自席でスマホを手に取り、画面でパスタ料理を選んでオフィスを出る。向かった先は、近くにある行列のできるイタリア料理店だ。

 行列を横目に席に着くと、すぐに店員が料理を運んできた。テーブルに置いたのは、さっきスマホで選んだパスタ料理だ。ゆっくり食事を楽しんだあなたは、代金を支払うことなく店を後にする――。

 乃村工藝社は、こんなサービスの登場を予感させるシステムの開発を進めている。実現の要となる技術が、近距離無線通信のBLEを活用してスマホの位置情報を検知する「ビーコン」だ。開発中のシステムでは、店のテーブルにビーコンを設置しておき、利用者がスマホをテーブルに置くと、来店したことをビーコンが検知する。

 ビーコンはインターネット経由で店側のタブレット端末などに来店を通知。利用者のスマホで事前に注文した料理の情報や利用者情報は、全てクラウド上に保管してあり、店側は注文情報に応じた料理を提供する。

テーブルクロスのような形状のビーコンを採用
テーブルクロスのような形状のビーコンを採用
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 サービスを自然に利用できるよう、ビーコンの形状も工夫した。乃村工藝社はテーブルクロスのように薄く平たいシート状の読み取り端末を採用。シートの表面へ均等に電波を流し、利用者がシート上にスマホを置くと、どのテーブルに着席したかを検知できる。

 新システムは他の技術との組み合わせやスマホアプリの機能次第で、様々に応用できる。来店ぴったりに料理を出したいのなら、利用者が来店予定時間をあらかじめ入力する、GPS(全地球測位システム)を併用して店の近くにきたことを検知して店側に知らせる、といった作り込みで対応できる。クレジットカード決済機能を組み合わせれば、食後の会計も省ける。