デンソーと日本電気通信システム、イーソルが出資する合弁会社オーバスは、標準規格に準拠した車載ソフトウエアを2017年4月に発売する。同社が出資を受けて2016年5月に発足して以降、初の製品となる。ソフトはセンサー類や駆動部品などを制御する電子制御ユニット(ECU)へ搭載するもので、標準規格に準拠した設計仕様を採用する。欧州を中心に車載ソフトの標準化が進む中、日本の自動車部品メーカーやベンダーにも標準規格に準拠した製品開発を促し、開発の効率化や海外市場での販売を進める狙いがある。

写真●オーバスのBSWの開発ロードマップ
写真●オーバスのBSWの開発ロードマップ
(出所:オーバス)
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 発売予定の車載ソフトは、「AUTOSAR Release 4.2」に準拠したベーシックソフトウエア(BSW)のα版(テスト用ソフトウエア)。BSWの上にさまざまなアプリケーションを搭載でき、アプリに対応した各機能を自動車へ付与できるようになる。既に一部の大手自動車部品メーカーには開発中の試作品を提供していたが、4月に正式に発売する。β版(正式版)は2017年12月に発売し、それ以降も新しいバージョンに対応する製品を提供していく。

写真●オーバスの開発するBSWの仕様
写真●オーバスの開発するBSWの仕様
(出所:オーバス)
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 AUTOSARは、欧州の自動車メーカーなどが立ち上げた車載ソフトの標準化団体が標準仕様を決めたものだ。基本的な仕様を標準化することで、ソフト開発の効率化や業界を巻き込んだセキュリティ対策を実現するのが狙いである。多くの企業がルール設計に関わり、標準化に向けた幅広い取り組みが進んでいる。自動ブレーキや自動操舵といったADAS(先進運転支援システム)が進化する中、車載ソフトに求められる機能は年々高まっている。従来のように各ベンダーが個別にソフトを開発する仕組みでは、開発コストの増加やセキュリティリスクに対応できなくなる。

 標準化にいち早く取り組んだ欧州企業に対して、日本企業はAUTOSARへの対応は遅れ気味。AUTOSARなどの標準化への対応が遅れると、標準規格に準拠した部品を生産する海外のメーカーへソフトを販売できなくなり、市場のシェアを奪われる恐れもある。

 オーバスはまずECUを開発する日本企業向けに販売を始め、徐々にシェアを広げていくという。泉彰司社長は、「当社はデンソーのソフト開発部門が独立した会社で、すり合せ(部品メーカー群と一体になって開発を手掛ける開発手法)に強みを持つ。将来は、欧米の大手ソフトベンダーにも勝ちたい」と意気込みを語る。