2016年12月にディー・エヌ・エー(DeNA)が運営する「WELQ(ウェルク)」が発端となって巻き起こった騒動。記事を無断転用したり、裏付けなく内容が正確でない記事を濫造したりするキュレーションメディアの運営実態が白日の元にさらされた。そして彼らが手掛けた記事が、実は検索エンジンの結果の上位に表示されるように仕組まれ、多くの人に目に付く形で流布されていたこととして社会問題にまで発展した。

写真●「WELQ騒動」を受けてディー・エヌ・エー(DeNA)は、2016年12月に謝罪会見を開く羽目に陥った
写真●「WELQ騒動」を受けてディー・エヌ・エー(DeNA)は、2016年12月に謝罪会見を開く羽目に陥った
(撮影:高田 学也)
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 筆者は、企業からウェブマーケティングの企画・立案を請け負う立場でネット業界に長年携わってきた。2000年ごろに勃興したSEO(検索エンジン最適化)業界が、陰口をたたかれつつも紆余曲折しながらも生きながらえてきた裏事情もよく知る立場にある。

 遅かれ早かれ起こるべくして起こった――。「WELQ騒動」に対して、私はそう感じている。しばらく時間が経過し、世間の関心が薄れつつある今、SEOの“闇”にもスポットライトを当てて、改めてWELQ騒動について検証してみたい。

なぜ悪徳なSEO会社が生まれたか

 検索エンジンのアルゴリズム(計算手順)を踏まえて、自社サイトのページが上位に表示されるように対策を施すSEOという考え方が登場したのは2000年ごろ。SEOを専門に扱う会社も現れ、2004年ごろに一気にビジネスとして花開いた。

 当初のSEOでは、検索結果の上位に表示させるには「外部対策」が重要だとされていた。検索エンジンのアルゴリズムがまだ単純であり、当該サイトへの被リンク数が多ければ多いほど上位表示されやすかったからだ。このためSEO会社は外部対策を実施して、検索結果の順位が上がったら成功報酬を得るサービスを提供。実際、比較的簡単に検索結果が変わったことから、インターネット上での露出を高めたい多くの一般企業がSEOに飛びついた。

 「SEOさえすれば、必ずサイトのアクセス数が増える。ウェブサイトの集客とはSEOとイコールだ」。そんなSEO神話が、今も根強く企業のサイト運用者やマーケティング担当者の間に残っている。時代は大きく変わっているにもかかわらずだ。ウェブマーケティングをSEOにばかり依存してしまい、検索連動型広告(リスティング広告)に頼らない考え方をしてしまう企業は多い。牧歌的な時代に形作られた伝説が未だに信じ続けられているのは残念でならない。実際、SEO会社のいいなりになってしまいがちな一般企業が少なくないのも、ここに原因があるのだろう。