パイオニアはコンテナ技術を採用して開発したカーナビ用のクラウドサービス「スーパールート探索」を2017年1月下旬から提供する。アプリケーションを柔軟に運用できるコンテナ技術の特徴を生かし、サーバーの処理能力や障害時対策といった「非機能要件」の設計を後回しにする、従来の常識とは異なる開発手順を採用した。

 新たな開発手順を採用したのは、カーナビの新機能をいち早く試験したり開発したりできるようにするため。非機能要件の設計を省いて開発に着手できれば、提供を予定する機能が有用かどうかを早期に判断でき、提供開始までのコストと時間を削減できる。

 スーパールート探索の対象は主力商品である高機能カーナビ「サイバーナビ」の2016年発売モデル。パイオニアは新たなシステム開発手法を土台に、サイバーナビの高機能化を推し進めて差異化を図る。

コンテナ活用で早く試す

 スーパールート探索はクラウドサーバーを使い、車載端末の処理性能不足から難しかった「交通事故が少ない道を優先」や「正確な到着予想時刻の算出」といった細かく設定したルート探索ができる。

 パイオニアは2015年春からスーパールート探索の試験開発を開始。2016年1月には本格化に開発を始めた。

 サービスを運用するクラウド基盤や運用方法の選定をはじめとする非機能要件の設計に着手したのは2016年8月のことだ。基盤は「IBM Bluemix」のIaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)に、コンテナ基盤構築ソフト「Red Hat OpenShift ContainerPlatform」を選択した。

 パイオニアは試験開発したアプリの機能や動作を評価してから非機能要件を設計する開発手順により、新機能開発のハードルが下がったとみる。商品統括部の谷川裕史情報サービスプラットフォームセンター開発部開発1課課長は、コンテナ技術を採用したことで「サーバーの処理能力などを気にせずに開発を始められた」と話す。

商品統括部の谷川裕史情報サービスプラットフォームセンター開発部開発1課課長
商品統括部の谷川裕史情報サービスプラットフォームセンター開発部開発1課課長
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 一般的な開発手順は、試験開発の前にアプリを動かすITインフラの非機能要件を設計する。アプリが十分な性能を発揮できるかどうかは、ITインフラを構成するサーバーの処理能力に依存するからだ。