前々回(日立、リコー、電通、KDDIはなぜIFRSを採用したのか)と前回(「比較可能性」がIFRSプロジェクトの軸とは限らない)は、上場企業の2015年3月期決算短信における「会計基準の選択の基本的考え方」を基に、IFRS(国際会計基準)を適用した目的や理由を分析した。

 今回はその続きである。上場連結子会社を持つIFRS適用(表明)会社の「会計基準の選択の基本的考え方」における開示文章と、上場連結子会社のIFRS適用状況から、当該企業グループの連結ガバナンスについて考察してみる。

この10年で子会社の上場廃止が加速

 親会社と子会社が共に上場する親子上場は、日本固有の現象として海外投資家からは否定的な見方をされている。東京証券取引所(JPX=日本取引所グループ)も一時期、親子上場に関して「禁止はしないが適当ではない」などと否定的な情報発信を行っていたが、最近は若干トーンダウンしているように見える。この秋へ向けての郵政3社(日本郵政、かんぽ生命保険、ゆうちょ銀行)の親子上場が念頭にあるのだろうか。

 官製の親子上場はNTTグループに続く第二弾となるが、海外投資家はもとより国内機関投資家も肯定的に評価しているとは思えない。筆者も歴史的な背景は理解できるものの企業運営上の透明性や利益相反などの観点から、日本企業の親子上場は好ましくないと考えている。

 グループ経営管理強化に積極的に取り組んでいる企業グループはこの10年ほどの間に、子会社上場廃止の動きを加速させている。代表的な例としては、依然として上場連結子会社が存在するものの、約20社あった上場子会社を9社まで減らした日立製作所グループが挙げられる。

 パナソニックグループも事業ドメイン整理統合の一環として、100%子会社化する、あるいは一事業部門として企業内に取り込むといった方法により、子会社の上場廃止を積極的に進めてきた。日本電産は買収後の企業の上場を一時期維持していたが、グループ経営資源の最適活用という観点から、全て上場廃止とした。