2015年3月期の決算短信から、上場企業は「会計基準の選択の基本的考え方」を開示することとなった。きっかけは、2014年6月24日に閣議決定された「『日本再興戦略』改訂2014 -未来への挑戦-」での「IFRS(国際会計基準)の任意適用企業の拡大促進」についての提言である。これを踏まえ、「2015年3月31日以後に終了する通期決算に係る決算短信から会計基準の選択に関する基本的な考え方を開示することを上場会社に要請しました」と日本取引所グループは説明している。

 会計基準の選択の考え方としているものの、実質的にはIFRSの採用方針を問いかけたものである。金融庁と東京証券取引所(日本取引所グループ)が車の両輪としてIFRS推進を図っている一連の流れから来るものと捉えてよい。

各社のIFRS検討の状況が垣間見える

 金融庁は4月26日にIFRSの適用状況を調べた「IFRS適用レポート」を公表した(関連記事:システム対応期間は1年4カ月、金融庁がIFRS適用企業の実態を調査)。同様に、あるタイミングで「上場企業の会計基準の選択の基本的考え方」などと称したレポートが出るのであろう。

 IFRS適用レポートは英訳され、既にIFRSの設定主体であるIASB(国際会計基準審議会)に対して「IFRS Adoption Report」として報告している。同様にIFRS採用方針についてもIASBに報告し、日本企業がIFRS採用に積極的に取り組んでいる姿勢をアピールする材料に使用すると考えられる。

 目的はともかくとして、今回の開示は各社のIFRS検討の状況を垣間見る貴重な情報であることは間違いない。そこで今回と次回で、各社がどのような表現で記載しているのかを通じて、IFRS適用の目的・理由の分析を試みる。