ビジネスブレイン太田昭和
会計システム研究所 所長
中澤 進

 総合電機メーカーの日立製作所、東芝、部品製造のデンソー、工作機械のDMG森精機と、日本を代表する伝統的製造業が相次いでIFRS(国際会計基準)の任意適用を表明した。中でも日立製作所はグループ10社が同時採用であり、かつ2015年3月期の任意適用開始である。かなり以前から時間をかけ用意周到に準備していたことが分かる。

 日立グループは昨今、社会事業イノベーションへ向けた事業再編成、グローバルオペレーションへ向けた諸制度の変革、同時に「日立スマートトランスフォーメーション」と称した間接コストの戦略的削減プログラムと数々の手を打ち、業績も目ざましいものがある。これらの改革の基盤として、ここ10年くらいの日立グループにおける連結経営ガバナンス再構築の動きは、従来の日本企業の殻を破ったものである。

 日立は今回、IFRS採用企業を一挙に10社増やして、東京証券取引所・金融庁の方針の実現に向けて大いに貢献した。この動きを牽引したのが、海外投資家のみならず東証からもその不透明さを指摘されてきた上場子会社の存在である、というのは皮肉なものである。

 ただし、一方で日立は、この連結子会社ガバナンス改革に対して、正面から取り組んできたこともまた事実である。情報関連子会社を中心に5社を一挙に100%化して上場廃止(2009年、)、御三家と言われていたうちの1社である日立電線を日立金属に統合して上場廃止(2013年)、といった具合に積極果敢に取り組んでいる。

注 5社とは日立システムアンドサービス、日立ソフトウェアエンジニアリング、日立情報システムズ、日立プラントテクノロジー、日立マクセル。日立システムアンドサービスと日立ソフトウェアエンジニアリングは2010年に合併して日立ソリューションズに、日立情報システムズは2011年に日立電子サービスと合併して日立システムズになった。日立プラントテクノロジーは2013年に日立製作所が吸収。日立マクセルは2014年に再上場し、日立は親会社でなくなった。

 買収した子会社の上場維持を社員のモチベーション維持の一部としていた日本電産も、上場廃止を積極的に推し進めている。2012年にサンキョー、コパル、トーソクなどの主要子会社を上場廃止にした。「一体運営で経営効率を高めるのが狙い」としているが、グループ経営効率を考えると自然とそうなるであろう。

 ちなみに日本電産も日立や東芝と同様にSEC基準(米国会計基準)適用企業であり、IFRS採用に向けて着々と準備をしているようである。