米ガートナーが2014年の「ハイプ・サイクル」に追加した言葉の一つが「スマートマシン」である(関連記事:米ガートナーの「ハイプ・サイクル」が20周年、考案者が技術動向分析の“キモ”を語る)。機械学習やロボットなどの技術を用いて、ある水準以上の賢さを持った結果を返してくれるプログラムや機械を指す言葉である。ハイプ・サイクルの提唱者であり、人工知能にも詳しい米ガートナー リサーチ部門バイスプレジデント兼ガートナーフェローのジャッキー・フェン氏に、2015年以降に企業IT担当者がスマートマシン関連で意識しておくべきことを聞いた。

(聞き手は竹居 智久=日経コンピュータ)


「スマートマシン」という言葉をどのように定義しているのか。

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 スマートマシンであるかどうかは、「0か1か」では表せない。程度の差こそあれ、「情報を基に自律的に意志決定する」「自律して何かを学び、それを行動に反映する」ことができるようになったもの全体をスマートマシンという言葉で表現した。総合的に「一定の能力を持つ」と言える水準に達したことが重要だ。スマートマシンを「人間の活動をある一定水準で置換するもの」と言うこともできるだろう。

 スマートマシンの主な領域として想定しているのは二つ。一つが、物理的にロボットのように動くもの。自律走行したり自律作業したりといった用途がある。もう一つが、ソフトウエアで実現するバーチャルな人格。何らかの判断を下したり、個人的なアシスタント/アドバイザーになったりする。

なぜ今スマートマシンなのか。

 スマートマシンを支える人工知能やロボティクスなどの技術自体は、何十年もかけて進化してきたものだ。それが最近になって、様々な変化が並行して起こり、実現できることの水準が一段階上がったとみている。

 例えばビッグデータが利用可能になり、それをコンピュータが高速に処理できる技術が整った。構造化されたデータやテキストデータだけではなく、静止画・動画・音声などのデータも利用可能になった。これにより、コンピュータがディープラーニングで自らアルゴリズムを生成して、様々なデータに基づいて自律的に判断したり問いかけに答えたりできるようになった。データを使う手法が3~4年前とはまったく違うものとなり、それがロボットやバーチャル人格などの形で具現化された。

 焦点が技術から応用に移ってきたという側面もある。これまでも人工知能やロボティクスなどの技術分野は注目されてきたが、どちらかと言えば技術的な側面での議論が中心だった。より高度なことができる人工知能やロボットを実現することが目的だった。

 最近になって、そうした技術をビジネスにつなげようという動きが活発になってきた。人工知能やロボティクスなどの技術水準が向上したことにより、ビジネスでの目的を達するために何らかの用途に利用するという議論が始まったのもスマートマシンという言葉を導入した理由だ。