多様な「モノ」がインターネットにつながって情報をやり取りする「IoT」(Internet of Things)。その普及を目指す非営利組織が、The Linux Foundationが設立したAllSeen Allianceだ。The Linux FoundationのSenior Director, IoTのPhilip DesAutels氏(図1)に、その活動やOSSプロジェクトの「AllJoynフレームワーク」について聞いた。

「IoT」ではなく「IoE」(Internet of Everything)というキーワードを使っているが、何が違うのか。

図1●The Linux Foundation Senior Director, IoTのPhilip DesAutels氏
図1●The Linux Foundation Senior Director, IoTのPhilip DesAutels氏

 両者は本来同じものだが、IoEはIoTのあるべき姿を表すために使っている言葉だ。今日、インターネットにつながるデバイスは既にたくさんある。ただしそれらは製品ごとにプロプライエタリーなものだ。IoTが目指すのは、あらゆる製品やデバイス、アプリが互いに通信し合えること。これをIoEと呼んでいる。

IoEが実現するとどのようなメリットがあるのか。

 消費者にとっては、身の回りにあるあらゆるモノを使って、生活を向上できることだ。例えば、冷蔵庫の扉が開きっ放しなら、照明を点滅させたり、テレビに通知したりできる製品が既に登場している。

 製品を提供する企業にとっては、製品を販売して終わりではなく、消費者が製品を利用するライフサイクル全体を通じて、新たな価値を提供できるようになる。

AllSeen Allianceが開発している「AllJoyn」について聞きたい。

 AllJoynは、複数のデバイスやアプリがうまく通信してつながるためのフレームワークだ(図2)。あらゆるデバイスに共通の機能を提供するコアライブラリがあり、この上に照明や家電など、デバイスごとに必要となるサービスフレームワークがある。デバイスのメーカーは、それを使って製品やアプリを開発する。物理層のWi-Fiやイーサネット、Bluetoothなどとは独立している。

図2●AllJoynフレームワークのアーキテクチャー
図2●AllJoynフレームワークのアーキテクチャー
共通機能を提供するコアライブラリ上に、デバイスの種類ごとの基本機能を提供するサービスフレームワークがある。

 またAllJoynでは、家庭内などのデバイス群がローカルネットワークを構成し、そこにつながるゲートウエイエージェントがインターネットと通信する。それぞれのデバイスが常にインターネットに接続する規格もあるが、ユーザーは照明をつけるのにわざわざインターネットに接続したくないだろう。この仕組みなら、セキュリティも確保しやすい。ローカルネットワークで通信する情報の権限も厳しく制約している。

IoTの規格が複数存在しているのはユーザーにとってデメリットだ。

 その通りだ。米Google社のNestや米Apple社のHomeKitなどはプロプライエタリーなもので、我々が目指しているものとは異なる。一方、米Intel社などが主導するOpen Interconnect Consortium(OIC)が解決しようとしている問題は我々と同じだ。AllJoynとアーキテクチャーも似ている。こうした規格が二つもある必要はない。実際、一つに統一する議論を始めている。

AllJoynをオープンソースプロジェクトで開発することの意義は。

 何十億ものデバイスがつながってうまく機能するものを実現するには、皆に同じソフトウエアを使ってもらうことが重要だ。彼らが見つけた問題を修正していくことで、AllJoynはどんどん良いものになる。これを実現できるのは、オープンソースのプロジェクトしかない。

 AllJoynは実際にソフトウエアを開発し、既に4回のリリースを果たした。そうした開発の中で相互運用性を決めてそれが仕様になり、事実上の規格になっていく。我々は規格団体になるのではなく、使ってもらえるソフトウエアを作りたい。