存在感増す企業に求められる“所作”

 1953年、3989万人だった日本の労働人口のうち、雇用者はおよそ4割しか占めていなかった。その60年後の2013年、雇用者は全体の8割を超え、「企業に勤める」ことが標準的な生き方になっている。他の先進国でも似たような状況だ。

 社会にとっても、企業の存在感が大きくなりつつある。例えば米グーグルは今年6月、人工衛星を使ったインターネット接続促進プロジェクトに、実に10億ドル以上を投資する計画であることを発表した。また同社は発展途上国のため、気球や無人飛行機を使ったネット接続環境構築プロジェクトにも取り組んでいる。

 また3年前の「アラブの春」の際、ネット接続環境を奪われたエジプト国民に対して、グーグルが音声回線経由でツイッターに投稿できるサービスを提供したことが記憶に新しい。グーグルのような大企業がどのように動くかで、社会のあり方を決めてしまう場合があるといっても過言ではないだろう。

 そんな影響力を持つ存在となった企業にこれからの時代、どのような立ち振る舞いが求められるのか――本書は文字通り、「未来の企業」のあり方を論じた一冊である。

 著者は前著『ワーク・シフト』が日本でも話題となった、ロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットン教授。本書はその『ワーク・シフト』の企業版と位置づけられ、絶えず変化を続ける現代社会において、企業も、前著で扱った個人と同様に「レジリエンス」を高めていかなければならないと訴えている。