「NTTは2015年4月1日、民営化30周年を迎えた」─この一文で始まる本書は、“会社の寿命”とされる30年目を契機に大きく変わろうとするNTTの戦略を徹底分析したビジネス書である。筆者は2013年に「キレるソフトバンク」を上梓しており、本書もNTTのトップをはじめとする幹部への密着取材により完成した。競合他社はもとより、NTTグループの社員の方でも初見の事実は多いだろう。NTTグループは全体で10兆円規模の売り上げを誇る巨大企業である。

 一方で現在の通信業界には「成熟化」「土管化」「同質化」の三重苦が押し寄せている。そこでNTTが出した決断とは─。序章の「鵜浦体制」では、この決断を下した稀代の戦略家である鵜浦博夫NTT持ち株会社代表取締役社長を中心にNTTの今を描いている。ここから読み始めると、最終章の「主役の時代は終わった」に共感してもらえるのではないだろうか。


NTT30年目の決断
榊原 康 著
日経BP社 発行
1944円(税込)